太陽光ファイバーライト 2008年度鳥取県発明くふう展県知事賞受賞


太陽光の取り入れには水晶球を用いた
○こんな実験です
光学分野での光の屈折と反射を用いて,暗い室内に太陽光を導入する実用的教材を安価な予算で開発しました。増築や庭木等によって採光条件が悪くなった部屋で,読書をしたり,植物を育てたりするのに適しています。駆動装置等の機械部品を用いないため,故障することはなく,半永久的に使用できます

○こんなことが分かります
球レンズを用いた屈折の法則や球面収差の問題を学習したり,円錐面に反射の法則を適用することで,光が円錐の頂点に集まること,光ファイバーは全反射を利用していることなどの原理等を学んだりすることができます。また,太陽からやってくる自然光をそのまま変換することなく光として利用しているため,環境とエネルギー分野での,自然エネルギーの活用を考えることができます。環境に配慮した教材になります。

○原理

地球の自転のため,太陽は東から西へと移動します。このため,太陽光を反射鏡を使って室内に導くには,通常自動追尾装置が使われています。しかし,本装置は機械式の自動追尾装置を必要とせず,純粋に光学的に追尾するシステムを構築することをねらいました。そのヒントは,日本古来の懐中電灯の龕灯です。龕灯は円錐形の中のろうそくの灯りを,円錐形の底面に設置した反射鏡と,周囲の円錐面で反射させ,効率よく光を前方へ出しています。このことを逆に応用し,容器内部が円錐形の鏡でできた龕灯に光線を送ると,円錐の頂点に光は全て向かうことを利用しました。
まず,水晶球に入った太陽光線は円錐内に焦点を結びます。太陽の移動につれて球レンズでできる円錐面上の焦点は移動しますが,球レンズの下半分は円錐内にあるため,焦点の位置が例え円錐面上で一周しようと,その後の太陽光線は円錐の頂点へ向かい,底に設置された光ファイバーの一端へ入射します。
球レンズでは球面収差が大きく,光線の入射位置により焦点の位置が少しずつずれていきますが,円錐面を利用している限り,全ての光は円錐の頂点へ向かうことになるので,球面収差の問題は解決されます。
使用した光ファイバーは,コア(芯)はアクリル樹脂,クラッド(周囲の被膜)はフッソ樹脂で,コアよりクラッドの屈折率が低く,その境界で全反射が生じます。このため,光の減衰は非常に少なく,光ファイバーの一端から入った光は,効率よく他端へ運ばれます。

光ファイバーを用いて,室内へ光を導入する
○材料
練水晶球(直径10cm),光ファイバー(三菱レイヨン「エスカ」直径1mm×5m,100本,ステンレス鏡(50cm×50cm),サンドペーパー400番,住友3Mラッピングフィルムシート#8000,木材,透明半球,コンパス,蝶ネジ3本セット,プラスチック段ボール,水道用フレキシブルパイプ,大型プラスチッククリップ,スパイラルチューブ,のこぎり,水性ラッカー,駐車場用コーン,ステンレス鏡

○材料の入手方法
練水晶球:ネットで購入,光ファイバー:東急ハンズや(株)シータスク
透明半球:東急ハンズ

○作ってみよう
@ 太陽光の集光には均一性がよく,直径10cmの大きさの球が安価に入手できる練水晶球を用いる。この水晶球を収めるため,正方形の板の中央に直径10cmの穴を開ける。
A 光ファイバー100本を束ね,両端をホットカッターで切りそろえる。サンドペーパーとラッピングフィルムで磨き,散乱による損失を減らす。。これを5mのスパイラルチューブで光ファイバーを傷から保護するために覆う。
B 駐車場用コーンの先端を,束ねた光ファイバーの断面の大きさに合うように切断する。また,円錐の底面が直径10cmの円になるように切断する。
C コーンの内部を完全に覆うように,ステンレス鏡で円錐鏡を作り,コーン内に設置する。
D 光の出口は,光ファイバーをフレキシブルに曲がる水道用フレキシブルパイプ内に通す。これにより,光を当てる方向に向けやすくなる。また,パイプを大型クリップに固定し,適当な箇所に支持できるようにした。
E 屋外に設置するため,雨やほこりを避けるためのアクリル製の半球形の透明フードを取り付けた。
F 集光部の支持台は断面1.7cm四方の角材と,同じ厚さの板材で四角柱状の枠組みで製作した。
 
○使い方
@ 円錐状の鏡の上部に水晶球のレンズを乗せ,半円球のフードをかぶせ,蝶ネジで3カ所を固定する。
A 太陽光が1日あたる場所へ設置する。
B このとき,コンパスの針が南に来るように設置すると,球レンズの後方に設置した反射鏡により,太陽高度が低いときに球レンズの上部へレンズ内での屈折や反射によって逃げる光を,再度レンズへ反射して戻し,効率よく光を利用することができる。
C 光ファイバーの照射部の先端を窓のすきまから室内へ入れ,フレキシブルパイプの根本に取り付けたクリップで,照射する書籍や植物等の前に固定する。
D フレキシブルパイプを曲げて,照射位置合わせを行う。
E 明るさは,フレキシブルパイプ先端にある光ファイバーの一端と,照射する物体との距離で調整する。

太陽光線の進み方


太陽光導入のモデル実験


組立方
@水晶球を取り出し,円錐鏡上部に乗せる
A半球形フードを,ネジの色に合わせて乗せる
B蝶ねじで三カ所を固定する

Cクリップで投光部を固定し,太陽光を照射する

D部屋を薄暗くして,光の伝播を確認する

太陽高度が低い時期では,水晶球の後ろに鏡を設置して光をすべて円錐鏡内に戻す

円錐鏡の最下部には光ファイバーの束が来る

フレキシブルパイプ,光ファイバー,クリップの接続

光ファイバーの端は,フレキシブルパイプの端まで持ってくる