重力レンズ


ワイングラスの脚の部分で作った重力レンズ
○こんな実験です
重い天体の背後にある天体の光が曲げられて観測者に届く「重力レンズ」の効果を模擬的に示すために,ワイングラスの脚の部分で重力レンズを製作します。

○こんなことが学べます
重力レンズにより,天体の像がリング状に歪んだり,扁平に変形されたりすることなどが分かります。

○こんな仕組みです
アインシュタインの一般相対性理論では, 重力によって時空がゆがみ,光線さえも曲げられます。これは質量を持つ物体に働く引力でのニュートン力学では,光に質量がないため説明できません。
遠方の天体と観測者との間に銀河や銀河団,ブラックホールなどがあると,その重力によって遠方の天体の光が曲げられて観測者に届く のが「重力レンズ」効果です。例えば太陽の縁をぎりぎりかすめていく光線は, 最初の方向から1.75秒だけ曲げられることが計算されます。1919年5月29日にアフリカとブラジルで起こった皆既日食で,天体物理学者アーサー・エディントン卿のイギリス観測隊により, 太陽のまわりに見える星の位置が, 一般相対論の予言通りにずれていることが確かめられ, アインシュタインと相対論の名は,一躍世界中に知られるようになりました.

「光線の軌跡は重力場中で曲げられる」という単純な性質から, 光源となる遠方の天体と観測者の間に, 重力をおよぼす別の天体があれば, 遠方の天体から出た光は, より近くの天体の重力場で曲げられて観測者まで届くことになります. 本来は別の方向に向かって拡散し, 観測者には届かなかったはずの光が, 観測者に集まって明るく見えます。 すなわち,観測者と光源の間の重い天体が,レンズの役割を果たすと考えられ, 「重力レンズ」と呼ばれます。

○準備しよう
ワイングラス(脚の底部がきれいな対数曲線になっているもの),ガスバーナー,軍手

○作ってみよう
ワイングラスの細くなった脚の部分の,底から3cm程度のところをガスバーナーで加熱し,引っ張りながら切断して,切断部分を丸く焼きます。

○製作の注意
ガスバーナーを使うときは,やけどしないように軍手をはめ,よく注意しよう。

○実験のしかた
銀河団や時空間に見立てた方眼,星に見立てた円などの上に重力レンズを置き,どのように変形されるか観察する

重力レンズの銀河団CL1358+62

重力レンズを引き起こしている銀画団Abell2218
中央の大きな楕円銀河の質量により,アーク状に歪んだ銀河が見られる
ワイングラスの脚の部分をバーナーで焼き切り,滑らかにする
様々な形状のものがあるが,対数曲線に近いものを選ぶとよい

観察用の銀河団の写真例

左の写真の上に重力レンズを置いた。銀河がアーク状に変形させられているのが分かる
○こんなこともできます
重力レンズを加工していないマティーニグラスで実現しました。いろんなグラスを試した結果,このグラスがよかったです。

○開発の経緯
鳥取大学附属中学校の浜崎氏より,2006年度の理科コーディネータの講師として相対性理論を易しく中学生に指導してくれないかと相談がありました。
そこで,興味深い実験はないかと考え,重力レンズを手軽に作る方法を模索しました。ワイングラスでもできるという記述をみつけ,脚の部分を観察していたら,対数曲線に近いものがあるのに気づき,試作して良好な結果を得ました。


ガズバーナーの使い方を指導(鳥大附属中学理科室にて 2006.8.20)
重力レンズをこの上に乗せて,時空のゆがみや星の見え方を確認してみよう
参考リンク:重力レンズシミュレーション  重力レンズgifアニメーション

鳥大附属中学の教室での重力レンズの学習風景

銀河団の写真の上に重力レンズを乗せて,効果を調べている中学生