鉛筆の芯にパラジウムメッキした燃料電池(Fuel Cell)


○こんな実験です
鉛筆の芯を電極にして水の電気分解を行い,その電極に導線を接続してソーラーモーター等を動かす実験が,燃料電池の実験として各地の科学教室や教員研修で使用されたり,中学校の教科書に掲載されたり(東京書籍は削除された。啓林館は市販の燃料電池を使用),実験装置が販売されたりしています。ところが,福島県立相馬高校の生徒達がSSHの研究で,炭素棒だけでは燃料電池の電極にならないこと,燃料電池ではなく,電気二重層コンデンサーであること,酸塩基電池にもなっていることを見つけ,野口英世賞最優秀賞2007を受賞しました。
ここでは鉛筆の芯にパラジウム鍍金して触媒電極とし,酸素と水素はステンレス線の電極を用いた水酸化ナトリウム溶液の電気分解で与える,簡単で安価にできる燃料電池を紹介します。

○こんな仕組みです
電解質にリン酸を用いた場合,右図のように水素イオンが移動イオンになります。水素ガスは触媒電極のパラジウムにより水素イオンと電子に分かれます。パラジウムは水素イオンを通す金属であり,電解液にリン酸等の酸を用いた場合,水素イオンは酸素極で酸素,電子と結びついて水になります。酸素もパラジウムが触媒となり,活性化されています。このように,燃料電池は触媒電極を用います。
一方電解液が水酸化カリウム等の塩基(アルカリ)性の場合,水酸化物イオンが移動し,水素極で水素イオンと結びついて水を生じ,酸素極では電子と酸素と水で水酸化物イオンを生じます。

○準備しよう 
プラスチック容器,(5cm×5cm×3cm程度),サンプルケース(φ=1.2cm×10cm程度,2本),鉛筆の芯(三菱ユニ2B等),塩化パラジウム,ステンレス線,リード線,ビーカまたは紙コップ,ゴム系接着剤,電子メロディー,電源装置,ワニ口クリップ付きリード線2本,ペンチ,錐,カッターナイフ,はさみ

○作ってみよう
@ 塩化パラジウムを溶かした液に,鉛筆の芯を負極に,ステンレス線(炭素棒でも良い)を正極にして,3Vで30分程度メッキする。
A サンプルケースの先端に錐で穴を開け,@の鉛筆の芯を刺し,接着剤で固定する。
B プラスチックケースにカッターナイフやはさみで丸い穴を開け,Aのサンプルケースを差し込み,接着剤で固定する。
Cステンレス線の先端をバネ状にし,リード線の被膜をかぶせて容器に開けた穴から出して,電気分解用の電極とし,Bのサンプルケース内に押し込む。
D 0.1MOL/L程度の水酸化ナトリウム等の電解液を入れ,サンプルケースの先端まで満たして3V程度で電気分解を行う。
E サンプルケースの上部に水素や酸素が十分たまったら,電源装置から切り離してメロディーICを接続する。

上部の触媒電極に接続して,メロディーICを鳴らす

触媒電極の役目。パラジウムは水素イオンを通す金属。電解液はリン酸等の酸を用いた場合

電解液に塩基性の水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等を用いた場合
○実験してみよう
ソーラーモーターやLEDを点灯させるにはどうすればいいだろうか。この燃料電池は0.9Vから1.0V程度しか出ない。直列,並列を工夫してみよう。
水素と酸素が消費されていく様子を見よう。


3Vで30分間メッキする

時間が多すぎると黒くなる

下部のステンレスの電極により,水を電気分解している。酸素と水素が2:1の体積比になっているのが分かる。

電極のケースと反対側に空気抜けの穴を開ける

電気分解は下部の電極で,燃料電池は上部の触媒電極を使用