液晶による光の散乱



白色LEDの光をヒドロキシプロピルセルロースの液晶に当てたところ。光源に近い部分は青が散乱され,右側は青が抜けて赤っぽくなる
○こんな実験です
美しいアクセサリーとして科学教室でよく使われるヒドロキシプロピルセルロースの液晶で,光の散乱を実験し,青空や夕焼けなどを実現します。
 
○こんなことが学べます
空が青い理由や,夕方の空が赤くなる理由を考えることができます。

○こんな仕組みです 
光の波長と比較して,波長の短い青は赤よりも多く散乱される,というのがレーリー散乱です。このため,「朝焼け・夕焼け」については、太陽の角度が低く(地平線や水平線に近い),光はより大気中を長く進むために青色は散乱し、より散乱されない赤色が届くことになります。十分小さい粒子による散乱はレーリー散乱と呼ばれ,波長の4乗に反比例します。したがって
 488nmの青い光は,633nmの赤い光より(633/488)4
=2.8倍多く散乱されることになります。
しかし,もし散乱物質が完全に均一に分布していると,散乱光はすべての球面波の積分として前方方向以外は消滅します。実際には散乱物質は密度のゆらぎがあるため,散乱光が残って観察されます。
このヒドロキシプロピルセルロースの液晶は,散乱の実験に適しています。


参考:啓林館 物理T教授資料

側面から当てたところ。光源に近い散乱光は青く,透過光は赤く見える

ヒドロキシプロピルセルロースの構造式
○準備しよう 
ヒドロキシプロピルセルロース(和光一級),MOのポリカーボネート製ケース,アクリルカッター,アクリル用接着剤(アクリサンデー),水,フィルムケース,割り箸,高輝度白色LEDランプ,上皿ばかり

○作ってみよう 
@ MOケースをアクリルカッターで切り,組み合わせて直方体のケースにします。
A ヒドロキシプロピルセルロース25gに水15mlを加え,フィルムケースの中で割り箸を使い,ネバネバするまでしっかり練ります。
B Aを@にいれ,色着くまで数日まちます。

材料:MOのポリカ製容器を切って,液晶を入れるケースを作る

水でしっかり練ります。水の量は0.1gまでしっかり測りましょう。
○製作の注意
@ 詰めた当初は乱反射が強く,散乱が生じません。数日置くことにより,細かな空気が集まって大きな泡となり,液晶が揃ってきます。
A 水はあらかじめ沸騰させたものを冷やして使いましょう。
B 水の量を20mlとすると,ピンクがかったものになります。水が多すぎたり,少なすぎると色が付かないので注意しましょう。

○使い方
高輝度白色LEDランプを直方体の一端から当てます。光源に近い方では側面が青く,青空に相当します。光源と反対側には青が抜けて赤が残ります。

練った当初は発色しない

まだ小さな空気の泡が多くて乱反射し,液晶の性質も持っておいないため,青も赤も見られない。

時間が十分たつと色付いてくる。

攪拌後8日目の様子

微小な泡が集まって大きな泡に成長した様子
○開発にあたって
元々装飾用に人気のある工作です。いろんな色が見えるということは,液晶の大きさが光と同程度ということであり,散乱が生じるのではと考えて実験しました。空気を全てきれいに抜く方法があれば,もっときれいな教材になります。

CDケースを2枚貼りあわせて作った薄い液晶シートに光を当てると,透過光は青の成分が減り,赤みがかる

白色光を液晶シートに当てた表側の反射光は,青みがかっている
○参考
この液晶は濃度転移型(リオトロピック)液晶といい,界面活性剤水溶液等が形成する液晶相で,界面活性剤の濃度変化により発現します。身近な例が石鹸です。ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)はパルプを水酸化ナトリウムで処理した後、プロピレンオキサイド等のエーテル化剤と反応して得られる非イオン性のセルロースエーテルです。
分子量は約30,000(n=約100)〜約1,000,000(n=約2,500)13)で,塩類や酸,アルカリに不安定で、界面活性作用や熱可塑性もあります。
ヒドロキシプロピルセルロースの分子構造は長い鎖状になっているため、その溶液は一般に高い粘度を示します。また、化学的に不活性で他物質と反応しにくいため,錠剤や顆粒剤の結合剤として使われます。
右の写真は,アシアナ機で米子空港から仁川空港へ向かうときに撮った夕焼けです。雲海に今にも沈もうとしている瞬間です。もう,青い光は散乱され尽くされて,太陽の周りは赤い光しかありませんね。


雲が厚いと赤い光だけ届くようになる

まさに雲海に沈もうとしているところ