波長が読める簡易分光器


○こんな実験です
プリズムを通った太陽や電球の光は、虹色に分かれた光を壁に映し出します。このように虹のように光の成分に分かれたものをスペクトルといいます。電球のフィラメントのような固体を高温に加熱したときのスペクトルは赤から紫まで連続的に光りの成分が見えますが、気体のスペクトルでは、輝線スペクトルと言って、数本の不連続なスペクトルが観察されます。このように、スペクトルを調べることを分光と言います。高価な分光器はプリズムを使っていますが、簡単な分光器は回折格子シートを使います。
ここでは計算が楽な1mm中に500本の溝が刻まれた回折格子を用い、厚紙を本体に使った簡易分光器を作ります。簡単な分光器でも設計図通りに曲がったりしないように組み立て、計算し正確な目盛りを付けることにより、十分実用になるものとなります。
○こんなことが学べます
回折格子の原理が体験的に分かります。また、様々な光を観察することで、固体と気体の光の違いや、吸収スペクトルの様子、光の色の異なる蛍光灯によるスペクトルの違いなどを観察できます。

○こんな仕組みです 
光源から出た光はスリットを通り、回折格子に入ります。回折格子で各色はその波長によって異なる角度(可視光では赤が最大)で回折します。目には光が飛び込んで来た方向を延長した方向から各光がやって来たように見えるため、分光器の目盛りの位置(スリットの左側)に適当な目盛りを付けることにより、波長を知ることができます。
では、その波長目盛りはどう付けるのでしょうか。ある色(左の原理図では赤)の光の波長をλ、回折格子の格子常数(溝の間隔)をd、回折角をθ(左図参照)とすると、一次の回折光(光源方向直射光の隣の光)について以下の式が成り立ちます。
 dsinθ=λ
また、左図より観察される光の位置xは、
 Ltanθ=x
これらの式より
 x=λL/(d^2-λ^2)^(1/2)
となり、右辺の各量に値を代入することにより、各色の成分の位置を求めて目盛りを作ることができます。

内部を真っ黒に塗る

光が内部にもれないよう、接着は確実に
○準備しよう 
回折格子シート(1mmに500本の溝のもの)、型紙、厚紙(B4)、アルミ箔1cm×5mm、トレーシングペーパー、のり、はさみ、カッターナイフ、黒マジックインク(procky等のにじみにくいもの)、洗濯ばさみやクリップ数個

○入手先 回折格子 (株)シータスク 他教材店

○作ってみよう 
@ 型紙を厚紙に貼り、外側の線にそって正確に切り取り、内側を黒く塗ります。
A クロスの線を引いた部分をカッターナイフで切り抜きます。
B 折れ線にそってカッターナイフで軽くなぞり、山折りします。
C 内側にトレーシングペーパーに印刷した目盛りを貼ります。このとき、目盛りの右端が、スリットの中心位置に来るように貼ります。
D アルミ箔にカッターナイフで細く切れ目を入れ、スリットにします。
E スリット、回折格子を箱の外側に貼り、それぞれ押さえ板を上から貼ります。
F のりしろにのりを付け、洗濯ばさみやクリップ等でしっかり接着します。

○製作の注意
@ すきまからの光が箱の内部にもれないよう、しっかり接着します。また、箱がねじれないよう、丈夫な厚紙を使いましょう。
A 目盛り部分の光が強すぎるときは、外側からトレーシングペーパーなどを重ね、暗くしてください。
 

スリットはアルミ箔をカッターナイフで切れ目を入れて作る
○観測の仕方  
@ 回折格子に眼をあてて、スリットに入った光を見ます。
A 蛍光灯の白色や昼光色で、分かれた色の明るさや太さが異なるのが分かります。
B ナトリウムランプの光が1本(正確にはわずかに離れた2本)見え、波長が590nmであるのが分かります。
C 色の異なる発光ダイオードなどの光をのぞいて、スペクトルの違いを観察しましょう。

○気をつけてね
太陽を直接のぞかないようにしましょう。

折れ目はカッターナイフで筋をつけて直角に折る

回折格子側

スリットと目盛り側
○開発にあたって
回折格子を使った安価(数千円)な簡易分光器は市販されていますが、波長が等間隔目盛りになっているものが見かけられます。しかし、スリットから離れるにつれ、目盛り間隔は広くならないといけません。回折格子の格子定数と箱の大きさから計算した目盛りを、ナトリウムのD線でチェックしたところ、いい結果が得られたので皆さんに紹介することにしました。目盛りはエクセルを用いて計算し、描いています。

観察例