フォーレ メリザンドの歌(Melisande's
song) 1898
「ペレアスとメリザンド」 第3幕第2場
城の塔にあるテラスにて。
窓の所で、メリザンドが長い髪をくしけ
ずりながら歌う
王様の三人の姫たちが | |
牢獄に閉じこめられています | |
闇の中に | |
ランプの金色の光が明滅しています | |
塔の階段を | |
姉妹たちは上がっていきました | |
七日の間、彼女たちは待ちました | |
そこでランプを灯し続けているのです | |
何の望みがあるの? と、一人の姫君が言いました | |
炎の上にかがみ込んで。 | |
ランプの燃えている音が聞こえるのです | |
ああ!けれども、もしも彼が来てくれたなら! | |
望みがあるわ!二人目の娘が続いて言いました。 | |
ほんとうにランプの燃える音だったの? | |
それとも、あの人が足音を忍ばせて上ってくる音では? | |
しかし、年長の姫君は | |
ほかの二人の姫君の方を向いて言いました | |
ああ! もう望みはないのよ 決して、 | |
私たちのランプは 消えてしまったのです | |
モーリス・メーテルランク − J.W.マッケイル |
ベルギーの作家、M.メーテルランク/Maeterlinck(1862-1949)の
有名な戯曲「ペレアスとメリザンド
1892」のロンドンでの上演のために
書かれた付帯音楽に含まれる劇中歌。
歌詞が英語で書かれています。
1898年6月21日、プリンス・オブ・ウェールズ劇場での上演(J.Wマッケ
イルの英訳版による)は、既に楽劇の構想が練られ、作曲の進んでいる
ドビュッシーの音楽が用いられる予定でしたが、ドビュッシーの拒絶に
よって、急きょフォーレのもとに依頼が持ち込まれるという経緯があった
ようです。ですから、たぶん歌手と観客のために歌詞は英語なのでしょう。
「ペレアスとメリザンド
」の付帯音楽は、このMelisande's
songのほか
に3曲あり、1893年(1897年?)に作曲されたチェロとピアノのためのあの
有名な「シシリエンヌ」も転用されています。フォーレはよほど大急ぎで依
頼に応えようとしたのでしよう。弟子のシャルル・ケクランが全面的に協力
しています。
清らかな塔のお姫様が、「希望があるわ」と歌うところは最もフェミニスト
フォーレを感じるところです。(この曲のいっさいの意味づけを除いて、音
楽だけを純粋に聴くことが出来るのなら、やはりそうです)
「ペレアスとメリザンド
」の物語のとってもわかりやすい解説はこちらへ