G.フォーレ
連作歌曲 「優しい歌」より
第5曲 本当に恐いくらい
OP61−5 1892-1894
J'ai presque peur,en
verite
本当を言えば僕はおそろしい位です | |
すぎた夏僕の心をとりこにした | |
うれしい恋に自分の生活が | |
今ではあんまり深入りしているので、 | |
そんなにまで愛しいあなたの姿が | |
すべてあなたのものであるこの心の中に住んでいる。 | |
僕の心はあなたを愛し、 | |
あなたの気に入ることよりほかは、なにも思わない。 | |
ごめんなさいね、 | |
こんなにあけすけなものの言いようを、 | |
あなたの言葉一つ、微笑みの一つが | |
僕の掟となるのだと思うと | |
僕はふるえおののいてしまう | |
あなたの身ぶりの一つ、目ばたきの一つ | |
言葉の一つで十分です | |
僕の心の奥にあるこの天国の夢を | |
悲しみの底に突き落とすのは | |
しかし、たとえ未来が暗くとも、 | |
たくさんの苦しみをを生み出そうとも、 | |
大きな希望の光を通してのみあなたを見たい | |
さて、この無上の幸福にひたって、 | |
何時も何時も自分に言って聞かせるのです。 | |
あまり度々で気恥ずかしい程ですが | |
「僕はあなたを愛す、僕はおんみを愛す!」と。 | |
ポール・ヴェルレーヌ |
いよいよ告白の時がはじまる。心臓の音が高鳴る。
あなたの言葉一つ、微笑みの一つが僕の掟となるのだと思うと僕はふるえ
おののいてしまう。
フォーレが燃えるように情熱を傾けたエンマ・バルダック夫人(後の
ドビュッシー夫人)は初見で「優しい歌」を歌って再々本当に頻繁に、
いろいろな箇所を訂正するように、フォーレに突き返していたという。
バルダック・モイーズすなわちドリーの母親。
この天才的な曲の背景にはそういう恋がある。「それはある明るい
夏の日のこと」1892年。