岡山県北部における冬季西高東低気圧配置時の降水の特徴
(2002.11.16 日本気象学会関西支部例会)


0.はじめに
冬型時には、山陰ではおおむね雪や雨、山陽ではほぼ晴れと、ほぼ対照的な天気分布となります。ところで、その中間の岡山県北部はどうかと言うと、山陽側のようによく晴れている時もありますが、山陰側のように雪や雨が降っていることもあります。時には鳥取よりも津山の方が積雪が多くなることもあります。(近年の津山で20cm以上の積雪の時には、ほとんどが鳥取よりも多く積もっています)

冬型時の雪雲は、日本海からやってきて、中国山地を越える時にいくらか弱まりますが、津山のあたりに来る時にはほとんど消滅する場合と、ほぼそのままやってきて大雪となる場合があり、この予測は、寒気の強さから推し量るだけではできません。そこで、この山越えの降水の実態を把握し、その予測を幾らかでもできないかという思いから本研究を始めました。

1.鳥取県沿岸〜岡山県沿岸にかけての天気分布


鳥取沿岸〜岡山沿岸にかけての降水・日照時間分布
鳥取・智頭・奈義・津山・福渡・岡山・玉野とアメダスポイント7地点を選択しました。そして、冬型日での各地点の平均日降水量・平均日日照時間を調べると、津山は降水量では北側の奈義に近く、日照時間では南側の福渡に近いということが分かりました。このことから、冬型日での津山は晴れやすく、降水も多めで、変わりやすい天気であることが考えられます。

2.山陰における山雪型との関係

地点の組み合わせ全冬型日における
日降水量の相関係数
鳥取−智頭
0.561
鳥取−津山
0.135
智頭−津山
0.601
智頭は鳥取と津山の中間にあるため、どちらとも相関が高くなっています。しかし、山を越えた智頭と津山の相関が高いことは、注目すべき点です。津山からみると、山沿いの智頭との相関が高いことから、山雪型との相関が高いことが窺えます。

3.冬型の強さ


7地点の日平均気温と日平均風速の相関図
散布データについては、津山での冬季降水の度合いで分けています。A群では降水がなく、D群になるほど顕著な降水(D群では日降水量5mm以上)がある日としています。
そこで津山で冬型日に降水が顕著なD群の分布をみると、気温が低く、風速が強いところに概ね分布しています(一般に強い冬型と思われる気象状況です)。しかし1例は気温が高いところに位置し、D群が多いところにも他の群があります。

4.津山において冬型日に降水の多い日がどのような気象条件の時に起きるか(仮定)


日本海、朝鮮半島、中国地方の地形から、寒気の流入が北寄りであるほど日本海を吹走する距離が長いことから水蒸気の補給を多く受け、また陸地を通過する距離が短いことから水蒸気を保持したまま中国山地の南側へ流入することが考えられます。

5.米子850hPa面での風向・風速と、津山での降水の関係


米子850hPa面での風向を横軸、風速を縦軸にとっています。
津山で降水の顕著なD群の存在する領域の風の状態をみると、概ね風向は北西から北、風速は10m/s以上の領域となっています。その領域には、A群は全く存在しません。この領域が、津山で大雪をもたらす可能性のある米子850hPa面の風の領域と言えます。
このグラフに、2003年12月20日に津山で40cmの積雪を記録した時の風の推移を挿入しました(グラフ内の線グラフ・矢印)。降り始める前は、強い風ながら西寄りの風で、領域の外です。そして次第に西北西〜北北西の風となり、ほぼ連続して時間雨量を記録(全て雪)し続け、風が弱まったところで降水が弱まっています。(他の大雪の事例でも、同じような経過をたどっています)

10.天気図からの見極め
津山で降水の顕著な冬型日では、5.から、米子の850hPa面で北西〜北の風向で、10m/s以上というやや強めの風速という特徴がみられます。850hPa面は地表に近いので、地表においてもそういった風が吹きそうな傾向の等圧線がみられれば、岡山県北部での大雪の可能性をある程度は見極められそうです。つまり、等圧線が南北にたっていて、かなり混んでいる状態の時が当てはまります。

データ解析対象期間:
1994年12月〜1995年3月、1995年12月〜1996年3月

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