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岡山県内の降雪特性(冬季西高東低気圧配置時における降雪の考察)
(2010.2.27 日本気象予報士会岡山支部予報技術勉強会)
0.はじめに
背景の画像は、記録的な小雪となった2010年冬の中で唯一積雪(1cm)を記録した2月6日に、
僅かな雪でもそり遊びをしようとするこどもたちです。
このようにこどもたちは雪に対して執着心を見せますが、大人にとっては交通の支障になる、
外仕事がはかどらないなどで迷惑な存在です。一方で雪景色を愛でる、スキー場には雪が多い方がいいなど多様な意見があります。
このように、雪は社会全体に大きな影響を及ぼしていますが、降り方は少しの気象条件の違いでかなり変わるなど大変デリケートで、予報も難しいものとなっています。
岡山県では、冬型・南岸低気圧どちらでも降雪の可能性がありますし、同じ冬型と言っても降り方は多種多様です(南岸低気圧でもいろいろあります)。
某巨大匿名掲示板で「微妙な季節風にハァハァ!!」というフレーズがありますが、こういった降雪をとりまく事情をとてもよく捉えていると思います。
1.冬型の時、岡山県内ではどんな降り方をしているの?
概ね県北山間部で多く、南ほど少なくなっています。例えば、
・・・県北山間部のみ
・・・新見市方面中心
・・・県北平野部(新見・真庭・津山(・美作)中心部)まで
・・・県中部(吉備高原)まで
・・・県南まで
といったパターンがありますが、冬型によっていろいろな降り方をします。
2.鳥取の方ではどうなの?
冬型時は、概ね北方から雪雲が流れてくることから、日本海側(ここでは鳥取方面)の様子もみてみたいと思います。
鳥取県では、大きく分けると山雪型・里雪型の傾向がみられます。
(もちろんその2つだけということではありませんが)
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山雪型 1995年12月25日 | 里雪型 1995年1月31日 |
山雪型として、1995年12月25日の例を挙げます。この時には、鳥取では積雪10cmでしたが、智頭では55cmまで達しました。
津山では40cmですが、26日の9時までは智頭とほぼ同じ積雪の増え方をしていました。
里雪型として、1995年1月31日の例を挙げます。
この時には、鳥取で30・31日の2日間で降雪量92cm(降水量100mm)となりましたが、智頭では降雪量46cm(降水量32mm)でした。
津山ではこの里雪型が山雪型に変わってから9cmの降雪でした。
ここで、鳥取・智頭・津山3地点の日降水量について、それぞれの相関を調べてみると、津山は鳥取との相関が悪く、智頭とは相関がやや高いです。
また、智頭からみると、鳥取よりも津山の方が相関がやや高くなっています。
このことから、津山は山雪型との相関があるのではないかと考えられます。
3.どんな時に岡山で降りやすいの?
2.で、津山では山雪型の時に降りやすいという傾向が考えられました。
山雪型の時には、下層風が海岸線に対して直交して流れてくるため、中国地方では北か北北西の風向になります。
また、日本海・中国地方の地形を考えた時に、西寄りの風の時よりも北寄りの風の時の方が岡山県に雪雲が流れてきやすいのではないかと思われます。
4.中国地方において、下層の風向によってどのような降り方をしているか
上の図は、全冬型日における中国地方での平均日降水量の分布を示しています。特徴として、
@中国山地沿い、山陰側で降水が多い
A特に中国山地の北側で多くなっている
B兵庫県北部、鳥取県東部山沿いで特に多い
が挙げられます。
上の図は、冬型時における米子850hPa面での風向別の、日降水量分布を示しています。特徴として、
@全般に、風向が北北西の時に降水が多い
A鳥取県沿岸・兵庫県北部沿岸では北西の時に降水が多い
B島根県中西部・広島県北部では、西北西・西の時でも降水が多い
C岡山県北部では、西北西・西の時に降水が少ない
などが挙げられます。
5.各地域が、どういった風向の時に降水が多くなるか
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@1 北北西 2 北西 | A1 北北西 2 西北西または西 |
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B1 北北西 2北または北北東 | C1 北西 2 北北西または西北西 |
上の図は、図示した地域が、どういった風向の時に降水が多くなるかということを表したものです。
@は、風向が北北西の時に最もよく降り、次は北西の時によく降るという地域です。
中国山地沿いから東部に広く広がっており、岡山県では中北部が該当しています。
Aは、風向が北北西の時に最もよく降り、次は西北西または西の時によく降るという地域です。
中国地方中部に広がっており、岡山県では西部に一部がかかっています。
Bは、風向が北北西の時に最もよく降り、次は北または北北東の時によく降るという地域です。
中国地方西部や山陽沿岸に広がっており、岡山県では中南部に一部がかかっています。
Cは、風向が北西の時に最もよく降り、次は北北西または西北西の時によく降るという地域です。
山陰東部に広がっており、岡山県では北東部の県境に一部がかかっています。
6.中国地方において、下層の風速によってどのような降り方をしているか
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5m/s未満 | 5m/s以上10m/s未満 |
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10m/s以上15m/s未満 | 15m/s以上 |
上の図は、米子850hPa面の風速によってどのような降水分布になるかを示したものです。特徴として、
@5m/s未満では、山陰沿岸・島根県で多い
A風速が強いほど、降水が多くなるラインが南下している(15m/s以上では、降水の多いラインが中国山地上となっている)
B風速が強いほど、山陽側で多くなる
が挙げられます。
7.津山での、米子850hPa面の風向・風速による日降水量の分布
図は、米子850hPa面での風向・風速分布図で、津山での降水の様子によってマーカーを変えたものです。
(A群は津山で降水なし、B群は津山で降水はあるが日降水量は1mm未満、C群は津山で日降水量が1mm以上4mm以下、D群は津山で日降水量が5mm以上、非冬型は冬型ではない日)
津山で降水が多い日では、米子850hPa面では風向が概ね北西から北、風速が10m/s以上となっています。
このグラフに、2003年12月20日に津山で40cmの積雪を記録した時の風の推移を挿入しました(グラフ内の線グラフ・矢印)。
降り始める前は、強い風ながら西寄りの風で、領域の外です。
そして次第に西北西〜北北西の風となり、ほぼ連続して時間降水量を記録(全て雪)し続け、風が弱まったところで降水が弱まっています。
(他の大雪の事例でも、同じような経過をたどっています)
8.岡山県下での顕著な降雪日における米子850hPa面の風向・風速の経過
(岡山・福渡・津山で前後6時間降水量>0mmの時にマーク)
図は、1990年以降の冬型で、岡山で積雪を記録した時及び津山で20cm以上の降雪を記録した時の、米子850hPa面での風向・風速の経過を示したものです。岡山・福渡・津山それぞれまで降水が0mmを超えた時にマーカーを変えています。特徴として、
@津山で前後6時間降水量0.5mm以上を記録したときは、概ね風向が北西から北で、風速が6m/s以上のところに分布している
A福渡で前後6時間降水量1mm以上を記録したときは、@の中でも特に風速が強いところに分布している。7.の「津山において冬型で降水が多くなる領域」に近い
B岡山で前後6時間降水量0.5mm以上を記録したときは、Aの中で特に風速が強いところにも分布しているが、そうではないところにも分布がある
が挙げられます。
【補足】
Bの例外的ケースについて概況を記すと、
@2000年2月8日9時については、寒冷渦前面の前線に伴う降雨とみられ、岡山で気温が約4℃なので積雪はないようです。
A2000年2月9日3時については、上記の寒冷渦の後面を南下する収束帯によるものとみられます。
B2005年12月22日9時については、米子500hPa面の気温が-42.5℃という非常に強い寒気により不安定度が強化された収束帯によるものです。
C2008年2月24日9時については、典型的な山雪型で、米子500hPa面の気温は-22.0℃と上記の例とは対象的に高温となっています。
おそらく、米子850hPaの風向が北西か北北西で、風速が20m/sくらいになれば岡山まで積雪の可能性が高まるとみられますが、
それ以下の風速の際にも寒冷渦や収束帯の動向によって県南でも積雪の可能性があることが考えられます。
(ただ、寒冷渦や収束帯がありながら、岡山で積雪していないケースは把握できていないため、どういった条件で起こるかということは言えません)
9.まとめ
@冬季西高東低気圧配置時における岡山県下では、概ね下層の風向が北北西の時に降雪・積雪の可能性が高い
A下層の風速が強いほど県南まで降りやすくなる
B寒冷渦や収束帯の動向や大気の不安定度によっては、下層の風速に関わらず県南でも積雪の可能性がある
ありがとうございました。
7.までのデータ解析対象期間:
1994年12月〜1995年3月、1995年12月〜1996年3月(気象庁のアメダスデータによる)
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