「近年の津山の冬は暖冬・大雪傾向」


津山測候所の、積雪の10傑は、
1 40cm '95.12.26
2 32cm '63. 1. 8
3 29cm '45. 2.25
3 29cm '99. 2. 4
5 27cm '82. 1.30
6 26cm '78. 1.10
7 25cm '94. 2.12
8 24cm '86. 3. 1
9 23cm '84. 1.31
9 23cm '93. 2. 2
9 23cm '97. 1.22
で、なんと90年代が11の内5つと目立っています。
次いで80年代が3つあり、50年代は1つもありません。
この11のうち、9つは私の記憶にあります。
私が幼少の頃(1977年頃)、大人たちは、「最近は雪が少なくなった」と言っていました。
その後雪が多くなってきたのです。
一方よく知られているように1987年から暖冬が多くなっています。
しかし津山では、1987年以降も以前と変わらず積雪があり、さらに1990年代になると記録的な大雪が相次いでいます。
この「逆相関」のような現象を考察してみます。


分析

まず、1975年以降の冬季の気温分布・冬季最深積雪をグラフ化します。

横軸:12月から3月までの平均気温(単位℃)
縦軸:最深積雪量(単位cm)
青線:1975年から1986年まで
赤線:1987年から1999年まで
青太線:1975年から1986年までのグループの近似線
赤太線:1987年から1999年までのグループの近似線

グループ分けは、連続暖冬の最初の年から(1987-)と、それ以前(-1986)としました。
それぞれに近似線を挿入しました。

まず前半のグループですが、比較的気温が低く、積雪量は5cmから27cmまで万遍なく分布しています。
一方後半のグループは、比較的気温が高く、積雪量は10cm前後のところに4回と、15cm以上のところに9回が分布しています。
前半のグループと後半のグループを比較すると、後半のグループは気温がかなり高く、積雪量も多くなっています。
(平均気温前半3.2℃後半4.2℃、平均最深積雪前半16.2cm後半19.3cm)
それぞれのグループの近似線を比較すると、後半のグループの近似線は右上(高温・多雪)にシフトしています。
1996年以降さらに右上にシフトし、1998年はこの期間内で最高の気温ながら16cmの積雪があり、1999年は近似線から最も右上に位置しています。


津山の大雪時の特徴〜風が北寄りほど降りやすい

この期間内の25回の最深積雪のうち、南岸低気圧によるとみられるものは2回のみで、他は冬型の気圧配置時で日本海からの雪雲によるものです。
ほとんどが冬型ということですが、その中でも津山に降るパターンは特徴があります。

冬型の時には日本海での風向が西寄りになることもあるし北寄りになることもあります。
大陸からの寒気は朝鮮半島北部の山岳地帯で分流され、その下流の日本海で合流し帯状雲が発生します。
この帯状雲が強雪をもたらすことが多いですが、西寄りの風だと北陸・東北方面へ流れ、北寄りの風だと山陰方面へ流れてきます。場合によると中国山地を越え津山にかかってきて大雪をもたらします。
帯状雲が発生しなくても、北寄りの風向だと雪雲が中国山地を乗り越えて津山に来やすくなります。
津山での大雪時は、私が知っている1980年以降の場合概ね北寄りの風の場合です。


帯状雲が到達する直前の例
1998年1月24日15時
この時間津山はまだ晴れているが、17時頃から本格的に降り始める
翌朝までに約20cmの積雪

帯状雲が到達し、その後北から次々と雪雲が到来する例
1999年2月3日18時
この時間津山は吹雪 時間降雪量約5cmとみられる
朝10時頃に1回目の帯状雲が到達し、その後2回目の帯状雲が到達したところ
既に15cm以上の積雪で、さらに15cmほど積もる


北寄りの風〜津山の大雪パターン〜はどのような時に発生するか?

北陸での豪雪時は、日本海に動きの遅い小低気圧があり、上空にこれも動きの遅い強い寒気を伴っています。
上空の気圧の谷は、日本付近にあります。 帯状雲が北陸地方にかかりつづけ、積雪が非常に多くなります。
この時津山では風花程度です。

北寄りの風が起きるパターンの時には、低気圧がかなり東(日本の東海上)にあります。
上空の気圧の谷も、東にあります。(東谷)

一般に気圧の谷の西側で、北風になります。
東谷の時に北から寒気が日本海に流れ込み、中国地方へ雪雲がぶつかってきます。


東谷の例 1998年1月24日21時 左は500hPa面 右は850hPa面
この時間津山は雪 17時頃に帯状雲が到達し、その後北から断続的に雪雲が押し寄せる
500hPa面での特徴:東経140°付近にトラフがある
850hPa面での特徴:東経150°付近にトラフがある
共に日本海では等高線が北北西から南南東に流れ、寒気移流の場であり、気圧の谷が深まっているところである


なぜ最近は暖冬でも大雪が起きるのか?〜寒気の南下する場所

近年は暖冬が多いですが、暖冬年の傾向としては上空のジェット気流(偏西風)が強いことがあります。
このジェット気流が寒気の南下を妨げ、暖冬となります。
もし寒気が南下しようとすると、本来日本付近へ南下しようとしていた寒気はジェット気流が強いため東にそれ、日本の東に南下します。
その形こそが、津山で大雪の降りやすいパターンなのです。

一般に寒冬は、日本に寒気が直接南下するために寒くなります。
また偏西風が蛇行しやすく、日本付近に寒気が流れ続け北陸を中心に積雪が増えますが、この時には津山に雪はあまり降りません。
勿論寒冬の時でも、東谷になることはあるので大雪の可能性は否定できませんが、暖冬の方が出現率が高いように考えられます。これは、今後の課題としたいと思います。
また、海水温が高いと降雪量が増えるという考えもあり、こちらも今後検討したいと思います。
いずれにせよ、暖冬でも大雪の可能性はあるといえます。


参考:1975年以降の津山測候所での最深積雪・12月から3月の平均気温
出現日最深積雪量平均気温備考
74/75'75. 2.2319cm3.3
75/76'76. 1.1211cm3.9
76/77'77. 3. 419cm2.73月のNo.2
77/78'78. 1.1026cm3.71月のNo.3
78/79'79. 2. 613cm3.4
79/80'80. 2.1912cm3.6
80/818cm2.6
81/82'82. 1.3027cm3.51月のNo.2
82/83 7cm3.7
83/84'84. 1.3123cm1.5南岸低気圧
84/85 5cm3.5
85/86'86. 3. 124cm2.03月の最深記録・'85.12.17に21cm(12月のNo.3)
86/87'87. 3. 212cm3.9
87/88'87.12. 222cm3.612月のNo.2
88/89'89. 1.2819cm4.4
89/90 5cm4.8
90/91 8cm4.5
91/92'91.12.3018cm4.8
92/93'93. 2. 223cm4.5
93/94'94. 2.1225cm3.6南岸低気圧・2月のNo.3
94/95'95. 1.1511cm4.2
95/96'95.12.2640cm2.9測候所最深記録
96/97'97. 1.2223cm3.9
97/98'98. 1.2516cm5.1
98/99'99. 2. 429cm4.62月の最深記録タイ・測候所No.3

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