sweets物語=前編=

 インドの旅から帰ったときは、数ヶ月カレーにはまった。イタリアから戻ったあとは、毎週末リゾットを作った。ネパールのときはチャイに、はまった。昨年ベトナムに行ったあとは、食卓に登場するフォーの回数がべらぼうに増えた。今回カンボジアでは、どんな味を覚えて帰るのだろう?ここ数年、うちの食卓はどことなくアジア風の無国籍料理に彩られている。

 甘味や駄菓子、フルーツの類があまり得意ではない私は、そういったものを見るだけで胸一杯になってしまう。だから買い食いができない。その土地土地の人たちが口にする甘味類やフルーツは、見てるだけで縁がなかった。これは旅をする上でとっても損なことだとかねてから思っていた。あげるといわれても、いらないとしか言えないから、会話も続かない。

そんな私が、今年はSweetsデビューを果たした。

 「かぼちゃプリン」。今まで日本で食べたことのある「かぼちゃプリン」は、プリンの生地にかぼちゃペーストが混ぜ込んであるものが主流。かぼちゃ風味のプリンだ。ところが、ここカンボジア・シェムリアップで食べたのは、まさに「かぼちゃ・プリン」。種をくりぬいたカボチャを器にしてプリン液を流し込み、丸ごと蒸して、切り分けた物。日本的に言えば、かぼちゃの甘煮とカスタードプリンの合体したもの。甘味料の甘さではなく、かぼちゃそのものの甘さが活かされているところが私の舌には大当たりであった。真似できるぞ!カボチャのシーズンにぜひトライしようと思っている。

それ以上に美味い!と感じたのは、「パンチャヌア」日本語で説明すると、豆あん入り白玉のココナッツ汁こって感じ。私は「ココナッツ白玉」と呼んでいた。ホテルのディナーバイキングのデザートで偶然見つけたのだが、どうやら、その日だけのものだったようだ。滞在中あちこちのレストランや街の屋台やお店のケースの中を覗いてみたが、それきり出会うことはなかった。

でも、ど〜しても食べたい!! 帰国後白玉粉とココナッツミルク缶を買ってきて、おせちの残りの栗きんとんをあんに「ココナッツ白玉」再現にはしったのは、言うまでもない。

 Sweetsデビューには、失敗談もある。「ドリアンアイス」がそうだ。夜食と飲み物調達にコンビニへ・・・という日本にいるときとほとんど変わらない行動をしてしまうのが、悲しいなあと思いつつ、今夜もきましたコンビニに。旅に出て生水・氷菓・氷は御法度・・・とわかっていても、カップ入りなら大丈夫?とアイスのケースをのぞき込む。字は読めなくても、絵が読めればどんなアイスクリームかはだいたいわかるというもの。このフルーツなぁに?ランブータン?ライチ?ドリアン?ドリアンはやばいよ、こっちのカップのにしようと、手に取ったときには、ドリアンの絵ではなかった・・・はずなのに。ホテルの部屋でぱかっとふたを開けるとぷ〜ん・・・となにやら不穏な臭いが・・・ひとくち食べて???「ね、このアイスいかれてる?やっぱアジアのアイスは、やばいか・・・」と、仲間に差し出す。「どれどれ・・・」と口にした彼女は叫ぶ。「ねこのしっこの臭いだぁ、ガソリンの味だぁ、こ、こ、これはもしや、ドリアン?!」しげしげとカップをながめて一言「AKEさん、ここにドリアンって書いてあるわ。ちゃんと見て買った?」・・・・オロロ・・・

とけると臭う??と思って、結局「ドリアンアイス」は、帰る日まで部屋の冷蔵庫の製氷室に入ったまま。それを「あ、忘れてきた!」と気付いたのは、チェックアウトをすませ、空港に向かうバスの中だった。