ポンポン船の製作


 

写真1 波立てて進むポンポン船 写真3 ろうそくの火に当たる部分を多くしたエンジン。
スピードも増す。

縁日の露店で昔売られていたブリキのポンポン船を,ろうそくとアルミパイプを用いたエンジンで再現してみましょう。水を振動させ,波立てながら進む姿は勇壮です。かって,ブリキのポンポン船を縁日の露店で購入し,壊れては半田付けで修理して遊んでいました。大変シンプルなエンジンなのに,振動音を発しながら水の上を進んでいく様子は,メカの好きな者にはたまらない魅力です。戸田盛和氏の「おもちゃセミナー」に原理が紹介されており,その中で市販のバイメタル式でなく,パイプでもよいと記述があったので,自作してみました。始めは銅のパイプを使っていましたが,安価で入手しやすいアルミパイプで十分であることが分かりました。ただ,アルミパイプは曲げるのに注意が必要です。露店のポンポン船はすばらしい科学おもちゃでもあります。いつまでも製造を続けて欲しいと思います。

○学習しよう
シンプルなエンジンですが,ガソリンエンジンと同じように立派な熱機関です。熱機関の原理とともに,持続した水の振動によって船が進む原理が学べます。

○原理
ポンポン船は,蒸気エンジンやガソリンエンジンと同じ熱機関であり,熱エネルギーを利用しています。熱は温度の高い方から低い方へ移動するため,熱をエンジンに導くには,高い温度の熱源(高熱源:ここではロウソクとパイプのコイル部分)と冷却して熱を奪い取る冷却部分(低熱源:パイプ全体で水冷+空冷)が必要です。冷やさないと,エンジンの焼け付きが生じて,エンジンは停止してしまいます。車のオーバーヒートに相当します。
この船は,走っているときシューシューという振動音を発します。またこのとき噴出口を中心に,美しい水波の干渉が見られます。パイプ内の水が熱せられ,水蒸気とともに水中に噴出すると,水の慣性によりパイプ内の水が水中へ出過ぎます。このため,パイプ内が負の圧力となって水の吸入が起きます。この過程が繰り返され(自励振動という)ますが,水の噴出は吸入より急激です。下の図のように,吸入時には水はパイプの口の広い周囲より水を吸い込むため,その運動量は進行方向をx方向とすると,y方向にも運動量を持つため,x方向の運動量は噴出時より小さくなります。一定なのは,単位時間あたりの水の吸入量と噴出量です。この
運動量の吸入時と噴出時での対称性の乱れにより,船は前進します。一定した振動ではなく,ときどき猛烈な噴出を観察することもあります。

○材料
イワシの缶詰の空き缶(流線型のもの),アルミパイプ(直径2mm,長さ18cm),ペットボトルの金属製のふた,針金(10cm),ロウソク,金切りばさみ,ペンチ,単三乾電池

○作り方
@ 船体は流線形のイワシの缶を使います。缶詰の上部を切り取り,パイプを通す切り込みを入れて船体を作ります。
A アルミパイプを単3乾電池にゆっくり巻き付けながら,中央をコイル状にします。
B 船体の上部両側に小さな穴を開け,針金を通してアルミパイプを固定します(写真2)。
C 金属製のふたにロウソクを立てます。

図 ポンポン船が進む原理 写真2 完成写真 

○製作の注意
@アルミパイプは少しずつ曲げていかないと,急に曲げるとつぶれてしまいます。
A缶の切り口でけがをしないように注意しましょう。

○遊び方
アルミパイプの一方の口へ,水道の水を勢いよく入れて内部を満たします。ふたをコイルの真下に設置し,ロウソクに点火します。しばらくすると振動による波が立ち,船が前進します。

○発展
パイプのかわりに,一端の閉じた一本の筒でも振動は生じます。いろいろな形のパイプのエンジンを工夫してみましょう。

○気をつけてね
火を使うので,大人の人といっしょに遊びましょう。

○参考文献
おもちゃセミナー 戸田盛和 日本評論社

ASHIさんちへ戻る