三朝のラドン温泉の放射能測定 2006.03.18
泉源近くの水を汲み,測定している所 |
平成17年度原子力体験セミナー(鳥取コース)が文部科学省と(財)放射線利用振興協会の主催,三朝町教育委員会の講演で行われた。対象は鳥取県内の小中高の教員で講義と実習が行われた。 ○目的 体験や専門家との触れ合いにより,原子力・放射線に関する正しい知識の習得とともに,21世紀の生きる生徒たちにとって魅力ある教育を探っていく。 ○会場 三朝町・観光商工センター 2F 中会議室 ○【講義と実習1】 10:00-12:00 「環境・福祉に向けた新素材の開発」 講師:須郷高信(元日本原理力研究所) 暮らしの中の環境を考える(放射線利用による環境関連材料の開発)というパンフレットを元に,放射性グラフト重合法を応用した快適生活用品の開発の経緯を述べた。原研技術をさまざまな医療雑貨に応用した製品の紹介や,実際にケミカル消臭剤や活性炭,匂いの元になるアンモニアなどが個別に配布され,実際の効果を確認した。 ○【講義と実習2】 13:00-16:00「ラドン温泉の放射能測定」 講師:鎌田正裕(東京学芸大学),中村麻利子(鳥取大学工学部) 参加者にポリ容器とはかる君が配布され,二人1組みで1カ所の責任測定泉源を決め,三朝地区と山田地区に別れて各泉源へ向かった。 各泉源では湧きだし口近くのガンマ線の強さをはかる君で2分間測定し,またポリ容器に一杯に温泉を汲んで会場へ持ち帰った。 会場では鎌田講師の指導のもと,はかるくんUによる空間放射線量率測定値(γ線,μSv/h)が報告された。各会場では3回測定し,その平均値を出した。また,水面と水面上1mでは2培程度の差が測定された。 持ち帰った温泉水は穴を押さえてよく振り,空気中にラドンを追い出して,粒状の活性炭を詰めたチューブに押しだし,ラドン222を捕集します。この上に窓を開けたはかるくんUを乗せ,ベータ線を測りました。時間の関係で,カウント数が増大し,減衰する途中で測定が終わりましたが,鉛214やビスマス214の核種がラドン222から生まれベータ線を出すことが確認できました。 この後,簡易霧箱を用いた放射線の飛跡の観察(温泉水から放出されたラドン222からアルファ線が放出される)が,中村講師により実演されました。
一般に上の表の後半の三朝地区は,前半の山田地区よりγ線量率は高いです。また,測定者が異なることと,湯の沸き出し口の近くに,浴槽の関係で接近にしくい箇所や,湧きだし口が空気によく触れている箇所等もあり,誤差は大きいものと考えられます。 |
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○ホルミシス効果 鳥取県の三朝温泉を代表とする日本のラジウム温泉としては、山梨県の増冨温泉、秋田県の玉川温泉 、島根県の池田温泉などが有名です。 ラジウム温泉には、ラジウムが壊れてラドンとなって入っているものとラジウムが化合物としてそのまま入っている2つのタイプがあります。 ラジウム温泉や岩盤浴の地域では、温泉・土壌・岩盤から発生するラドンや微量の放射線には体の自然治癒力を刺激し、活性化する効果があると言われます。三朝温泉にもその看板が至るところ(特に泉源付近)に見かけられます。ごく微量の放射線が身体にホルモンのように作用することは「ホルミシス効果」と呼ばれ、現在注目されています。 しかし,その科学的根拠はまだ説明がついていないのではないでしょうか。放射線の刺激が身体を活性化するなんらかの効果があるのかも知れませんが。 でも,いつも三朝へ行って感じるのは,三朝の方は肌が白く,きめが細かいのです。これは三朝に住んでおられる方,皆さんに言えることです。三朝もやめられた旅館が増えています。温泉がまだ使えるのにもったいないと思います。老後を三朝で過ごすのもいいですよ。 |
鎌田講師の講義と実験方法の解説 |
中村講師の講義 |
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簡易霧箱の観察 |
温泉水から出たアルファ線の飛跡を霧箱で観察した |
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今回のセミナーでは事前準備等(財)放射線利用振興協会の高橋様,後藤様,また三朝町教育委員会,三朝町商工会様にご協力いただきました。ここに感謝の意を表したいと思います。 |