元劇団員の方による表現の指導
    

 本校は平成11年度より「学校の情報化」を特色とした総合学科に移行した。平成12年2月には総合学科実習棟が完成し,70台のコンピュータと,2台のテレビ会議システムを備えたコミュニケーションルームによる授業が始まった。総合学科は自分で考えて行動し、自分の意見を持ち、それを確実に伝えることのできる生徒の育成をねらっている。本校では、1年次生の人生設計を行う「産業社会と人間」、2年次生の「総合学習」、3年次生の「課題研究」、LHR等、生徒がプレゼンテーションを行う機会が多い。また、学校設置科目として情報メディア系列に「プレゼンテーション」を設け、さらに発展的に能力を伸ばすことをねらっている。
 このように他の学科に比べ、プレゼンの場は多い。しかし、一年次生の多くは、人前で話すことが苦手であり、わざと聞こえないように小声で発表する者さえいる。小学校5年生あたりから校歌を大声で歌うことができなくなった彼らを変えることは至難の業である。年に数回、プレゼンの専門家による個別指導を行った年もある。
 本校情報科では、平成15年度より県の社会人講師制度を利用し、元劇団四季の池内あやみ氏を招き、クラス単位でのプレゼンの基礎指導を、「情報C」(一年次生)の中で行っている。池内氏の1時間の指導内容は、
・表現することの楽しさについて
・発声練習「あいうえお、いうえおあ、・・・・」
・詩の朗読 〜いかにして気持ちを表現するか〜
である。劇団員としての経験を活かし、発声のための姿勢や呼吸法だけでなく、表現のために大切なことをリズムよく指導していただいている。「実際に表現を仕事にしていた方の話を聞き、発声練習や詩の朗読を行うことで、生徒は表現することの楽しさや喜びを知ることができたようだ。また、今後自分の気持ちを取り入れた表現ができるようになる、良いきっかけになったのではないだろうか」(本校教諭 西尾敦)。

 筆者は総合学科立ち上げの際に千葉市の幕張総合高校を訪問し、ある選択科目を現役の俳優が指導しているのを、羨望のまなざしで見た。とても鳥取の田舎町でプロの方の指導が受けられるとは思えなかった。しかし、機会は訪れた。元劇団の方が家庭に入って鳥取市に住まわれていた。さっそく連絡をとってお会いし、指導をお願いすることができた。