電磁誘導シャカシャカライト



シャカシャカ振るとLEDが点灯する
○こんな実験です
電池がなくても,シャカシャカ振るだけで点灯するライトです。発電機の元となったファラデーの電磁誘導の原理を学ぶことができます。ネオジム磁石は百均ショップで売られているマグネットから取り出したため,200円から300円と安価に製作できます。

○こんなことが学べます 
ファラデーの電磁誘導やレンツの法則が学べます。

○こんな仕組みです
自然界には,今の状態が変化するのを妨げようとする法則があり,恒常性を保とうとします。電磁気学ではレンツの法則がその一つです。今,原理図1のように磁石のN極が1回巻きのコイルに近づく場合を考えましょう。
レンツの法則より,コイルには磁石に近い側にN極ができて,磁石の接近を阻もうとします。右ネジの法則を使うと,原理図1のように電流が流れ,右側のLEDが点灯します。磁石がコイルをまさに横切ろうとすうるときは,N極はコイルから離れようとし,S極はコイルに近づこうとします。このとき前者ではコイルに下向きにS極ができるように電流は反時計回りに流れようとし,後者でS極が上向きにできるため,電流は時計回りに流れようとし,結局うち消しあって電流は流れないため,LEDは点灯しません。
次に磁石がコイルから出て行くときは,下向きにN極ができて磁石が遠ざかるのを阻もうとします。このため,電流は時計回りに流れ,左側のLEDが点灯します。
この磁石はパイプの端で向きを変え,コイルに向かってやってきます。
まずSがコイルの下から近づくため,下向きにSができ,半時計回りの電流が流れて右側のLEDが点灯し,磁石が上に出ていくときに上向きにSが生じて時計回りの電流が流れて左側のLEDが点灯します。
コイルを横切る磁力線の数の変化が速いほど,コイルに生じる起電力が大きくなります。起電力の向きは磁力線の数の変化と逆向きです。これをファラデーの電磁誘導の法則といいます。

原理図1 N極がコイルに近づくとき

原理図2 S極がコイルから遠ざかるとき

サークルカッターでコイルの両端を留めるリングを切り出す
○準備しよう
ネオジム磁石(φ=8mm×3mm 5個),高輝度緑色LED(OSPG5161A),高輝度黄色(OSYL511A),ホルマル線(φ=0.2mm×5m),アクリルパイプ(外径φ=15mm,内径φ=8.5mm×20cm),スチレンボード,プラスチックパイプ(φ=8mm×5mm 2本),半田ごて,ビニルテープ,サークルカッター

○入手先
ネオジム磁石:百均ショップのマグネットから取り出す

○作ってみよう
@アクリルパイプを20cm程度に切断します。また,パイプの両端にきつくふたができるよう,プラスチックパイプを5mmの長さに切り,ビニルテープで太さを調整します。
Aアクリルパイプの外周が内周になるように,スチレンボードからサークルカッターでリングを切り抜き,アクリルパイプにはめ込み,ホルマル線を1000回程度巻きます。
B高輝度LEDのプラス側とマイナス側の脚を合わせ(発生するのは交流なので,いつでも点灯するようにするため),巻いたホルマル線の両端に半田付けします。上からビニルテープを巻きます。
Cアクリルパイプの中にマグネットから取り出したネオジム磁石5個を連結して入れ,ふたをして振ります。

コイルとLED,磁石の様子

装置を左右に降りながら,下へ移動した写真。左側は磁石が右から左へコイルを貫き,右側では磁石が左から右へ磁石を貫く。緑と黄のLEDの点灯順が逆になっていることに注意。
点灯の動画(AVIファイル)

* 左図の左側では装置全体が右から左へ振られて止まるため,慣性によって磁石が右から左へコイルを貫き,緑が先に点灯している。また,左側では逆に磁石が左から右へコイルを貫き,装置が左から右へ運動しているため,ここでも緑が先に点灯している。常に緑のLEDが黄より先に点灯していることは,レンツの法則から正しく説明できる。
○製作の注意
@ホルマル線は巻くときは隣の線とできるだけ密に巻いた方が,少ない長さで多く巻くことができます。
Aネオジム磁石をマグネットから取り出すにはニッパを使いました。磁石を傷つけないように注意しましょう。

○遊び方
少し暗い部屋や,部屋を真っ暗にしてシャカシャカ振ってください。ゆっくり振ったときと素早く振ったときの違い。ネオジム磁石の数を変えたときの違いなどを比較しましょう。

○開発にあたって
教材用に市販されている教具が安価にできないかと,百均のマグネットを使って試作しました。ここで使用した黄色(発光色は橙)のLEDは袋に貼られたデータが1.8-2.4V,緑色が3.2-3.4Vとなっており,黄色の方が明るいです。緑を赤(OSHR5161A)に変えると黄色と電圧範囲は同じですが,赤は黄色よりはるかに明るいです。0.2mmのホルマル線は,一般に手巻きに適した最低の細さになります。これより細いと機械巻きでないと巻いている途中に切れることがあります。
水性ボールペンの軸を使った安価バージョンです。百均(ダイソー)のマグネットから取り出したネオジム磁石5個を封入しています。ホルマル線は千回巻きです。磁力が弱いので,巻き数は多めにしています。また,LEDも点灯電圧の低い赤と黄です。
巻いているうちに右へホルマル線が偏ってしまいました。磁石の動くスペースに差が生じ,右から左に振ったときは,左から右より暗くなります。これも速度が起電力に関係していることが分かっていいかも。ボールペンは,穴をふさぐ栓が初めからあるので作りやすいです。