アインシュタインの重力場


剛球への重力で歪んだ低反発ウレタンフォーム
○こんな実験です
ニュートンは重力によって物体は引き寄せられるとしましたが,アインシュタインは,一般相対性理論で重力を「力」としてでなく「空間の幾何学」に置き換えました。これは画期的なことで,物体のまわりに「空間」のゆがみができ、空間を最短距離 で進む光(電波なども)が曲がってしまうことが示されました。物体が重いほど、また、物体のそばであるほど空間のゆがみがひどくなります。
ここではこの重力場モデルを,低反発ウレタンフォームと金属球で実現します。

天体の背後にある天体の光が曲げられて観測者に届く「重力レンズ」の効果を模擬的に示すために,ワイングラスの脚の部分で重力レンズを製作します。

○こんなことが学べます
アインシュタインは,太陽の縁をかすめる星の光は進路が曲がることを予言しました。その角度は1.75秒。アメリカの有名な天文学者ジョージ・ヘールは、皆既日食の際、太陽近くにみえる星の位置を観測すればよいことを提案し,早速イギリスのアーサー・エディントン率いる観測隊が1919年5月29日の皆既日食(南米・アフリカで見られた)の観測に派遣されました(ギニア湾プリンシペ島とブラジルのソブラル)。
その結果,ほぼアインシュタインの理論どおり星からの光が曲げられ,アインシュタインの名と一般相対論の評判がいちやく世界に広まったのです。
このモデルでは,ウレタンに生じた窪みに小さな軽い球を転がすことにより,進路が曲がったり,楕円運動などが生じて,重力の効果を確認することができます。

○こんな仕組みです
低反発反発ウレタンフォームは,おもりの周囲が均一に変形し,しばらくその変形を保ちます。重力場モデルを示すのに好都合です。

重力場のイメージ図(重力レンズ)
○準備しよう
低反発ウレタンフォーム(20cm×20cm,押谷フェルト化成株式会社製),剛球大(直径4cm,220g),剛球小(直径2cm,50g),油性ペン,定規

○入手先
低反発ウレタンフォーム(押谷フェルト化成株式会社),剛球:東急ハンズ,ホームセンター

○作ってみよう
@ウレタンフォームを20cm四方にカットします。
A@に2cmの方眼を定規を使って油性ペンで描きます。
B大小の剛球を乗せてウレタンフォームを凹ませます。

○製作の注意
線を引くときは強く押すと線が曲がります。軽く引きましょう。

材料一式

ウレタンフォームに定規を用いて等間隔に線を引く
○実験のしかた
剛球を取り去り,すぐビービー弾などの小球を凹みに向かって転がします。回転して凹みに落ち込んだら星への落下,軌道が曲げられたらスイングバイ(星の重力を利用して宇宙船を加速する技術)のモデルになります。


○開発の経緯
鳥取大学附属中学校の浜崎氏より,2006年度の理科コーディネータの講師として相対性理論を易しく中学生に指導してくれないかと相談がありました。
そこで,興味深い実験はないかと考え,重力レンズとともに,この重力場モデルを示すことを思いつきました。いろいろなスポンジやゴム膜などを試しましたが,この低反発ウレタンフォームがしばらく形状を保つことと使いやすさから,一番いい材質だと判断しました。

剛球を取り去った直後。ここにビービー弾などの小球をころがして弾の進み方を観察する

鳥大附属中学での理科コーディネータ事業の様子(2006.8.20)