ペンシル水ロケット


○こんな実験です
水ロケットが盛んに実験教室で行われるようになりました。運動量を体感するのに大変すぐれた教材です。しかし,これを室内で演示するのは水がかかって大変です。ここでは教室や風呂などで手軽に飛ばせるペンシル型の小型水ロケットを試作しました。日本が最初にロケットを飛ばしたのもペンシルロケットでした。

○こんなことが学べます
ロケットが燃料を噴出することにより,ジェット機と違って空気がなくても飛べることや,効率よく水ロケットを飛ばす条件を学ぶことができます。

○原理
ロケットは空気がない宇宙空間でも飛行することができます。液体燃料のロケットは水素と酸化剤の酸素を積んで,これらを燃焼させてできた光速のガスを噴射します。固体燃料のロケットでは,火薬に酸化剤が入っています。
自分の身体をちぎっては投げ,ちぎっては投げして,燃料を投げた反対方向にその反動で飛んでいくことができるのは,運動量(質量×速度)保存法則という原理を使っています。例えば地上に対して静止していたロケットは,元の運動量は0です。ロケット本体の質量をM,燃料をm,燃料をvで一度に放出すると,ロケットの速さがVになるとすると,運動量は元々0なので,ロケットと燃料の運動量をたしたものも0です。
したがって,
 MV+mv=0
となり,
 V=−mv/M
となって,ロケットは燃料と反対方向に上の式の速さで飛ぶことができます。
実際のロケットでは燃料を細かくし,高速に連続的に出して効率よく加速しています。また,ロケッットは重心が前にないと安定してまっすぐ飛べません。ロケット花火に棒が付いているのはそのためです。槍投げの槍といっしょです。先端を重く,後部に羽根をつけて空気抵抗により重心を前に持ってくる作用で,より安定性を増します。

上は底のふたがはずれるタイプ。短時間の噴出型
下は小さなノズルから長時間噴出するタイプ

先端にクールガン用プラスチックを詰めて,重心を前に移動させ,飛行時の安定性を高めたもの
○準備しよう 
ディスポーザブル医療用容器(エレガ YS-1,PP-1等相当品 キャップ月),ペットボトル用接着剤,きりまたはドリルの刃(4.6mm程度),油性ペン,注射器(25ml テルモ等),グルーガン

○作ってみよう
@ 容器のフタの中心に,まずきりで穴を開け,だんだんドリルの刃を大きくして注射器の針の取り付け部がしっかり固定できるようにします。
A 容器の後部にブラスチックの板を切りだした羽根を4枚,互いに90度方向に接着剤で仮止めします。ポリエチレン等の材質では強く接着するのは専用のものでないと困難です。そこで,仮止めが済んだら,グルーガンで溶かしたプラスチックを塗って,強固に固定します。
B 好きな色や文字・図形を描いてフタを残して飛ぶタイプは完成です。
C ロケットの燃料は少量ずつ高速に噴出すると,長時間加速してより高速を得ることができることを説明するには,フタも容器に接着剤で固定し,注射器のノズルより少し太めのパイプを容器の穴に接着します。

○製作の注意

容器の前部を切り取り,グルーガンでプラスチックを詰めて重くします。クールガンの先端は熱いのでやけどに注意しよう。

少しずつドリルの刃を大きくしながら穴の大きさを調整する
上はフタは残して,容器だけ飛ばすタイプ





下はフタの中央にパイプを接着し,細いパイプから流体を少しずつ噴出するタイプ

後部にプラスチック板の羽根を接着剤で仮止めする
飛ばし方
@ 注射器で水を容器内(ロケットロケット本体)に入れます。
A 容器内に空気だけのときと,水の量を100%,80%,60%,40%,・・・と変化させながら,飛距離や高さを比べてみましょう。もちろんこのときは同じ人が同じ力で押して飛ばします。 

○注意しよう。
@ 予期せぬ飛び方をすることもあるので,周りに人がいないことを確かめて飛ばしましょう。
A 注射器のピストンを押すときは手のひらで
強くたたいてはいけません。持ち手が部分が割れて危険です。普通に持ってすばやく押し込みましょう。

○こんなこともできます
フタのついた容器なら何でも水ロケットになります。図はバンダイから出ているアンパンマンのタレ瓶です。


グルーガンで羽根を強く固定する

タレ瓶のフタに穴を開けて水を入れます。

アンパンチ!
ただし人に向けて打たないように!
注射器のピストンを強く押します。たたくように押すと割れて手に刺さることがあるので気をつけましょう
○開発にあたって
異動したての学校には教材があまり整備されてないことがよくあります。私はイスラエル製の小型水ロケットを20年前に東京の「光栄」で購入したのですが,異動に伴い紛失してしまったようです。そこで,手軽にできるものを考えていたところ,京都青少年科学センターのWebで注射器でフィルムケースを飛ばす実験を知りました。幸い,私の家は昔医療機器の商売をしていたため,ディスポーザブルの医療容器のサンプルケースがたくさんありましたので,ロケットの形をしたもので工夫することにしました。
動画(MPEG1)
@ 容器のみ飛ばすタイプ(空気のみ)室内屋外

A 容器のみ飛ばすタイプ(水を噴出)室内屋外1屋外2

B 細いノズルから噴出するタイプ(空気のみと水入りとあり)