社 会 小 児 科 学

 国民健康保険智頭病院に異動して10月末で3年になります。

< なぜ小児科医になった? >
 基礎的な研究よりは、臨床に関心があった。
 子どもが好きだった。
 学生時代に「重症心身障害児」との出会いがあった。
 竹下研三との出会い 〜 恩師
  : 臨床医としての姿勢を学んだ

 医療圏一人小児科医であり、公的病院に勤務しているがゆえに、乳幼児健診、ワクチン接種、4保育園の園医、6小学校の校医と中学校の校医や、多方面からの依頼講演に応じるなど、社会小児科学的活動も担っています。(講演は、高齢者を含め、休日に限らず平日の夜など多種多様で、県境を越え、岡山県美作市・真庭市・岡山市にも出かけています。)

 智頭中では、「職業人に学ぶ」授業があり、校医活動の一環として、出かけました。中学生に話をすることに難しさを感じましたが、事前の質問の一つに<なぜ小児科医になった?>があり、上記の内容をまとめてお話した次第でした。また、「学校保健だより」への原稿を依頼され、「あなたの幸せ・家族の幸せ 〜 智頭に居ることの意義・誇り 〜」を記しました。

あなたの幸せ・家族の幸せ 〜 智頭に居ることの意義・誇り 〜
1 あなたのご家庭では、夕食時間中にテレビを消していることがありますか?
  あなたのご家庭では、夕食後にテレビを消して歓談する機会がありますか?
  あなたのご家庭では、お互いに目・顔を見合わせて話すことがありますか?
 今、日本では家族が、家族としてかかわりあう時間・質が低下している傾向があります。モノ・金・見かけの成績に囚われることなく、テレビやTVゲームに大切な時間を奪われることなく、かつ、それらにより家族のきずなが弱まり、個々人の不安・緊張が増長することなく、関係性を育む努力が必要な時代にあります。

2 命・夢・創造・挑戦・表現・感動の6つは、「いきいき鳥取っ子」のイメージとして、県教委の検討で選択した要素です。あなたはご自身の「命」を大切にしていますか? ご家族で「命」について話し合うことがありますか? あなたの「夢」は? ・・・ ご家庭で、家族で、これらについて話すことが出来ることは、家族の幸せに係る要素といえましょう。命・夢・創造・挑戦・表現・感動の6つを、あなたが保持する限り、かつ、家族で共感し続けるならば、幸せな人生となります。

3 地球的視野で思考し、地域に根ざして活動すること(globally thinking, locally acting)は、家族として生活できていることの幸せ、智頭で暮らしていることの幸せ、そして、日本人としてあることの幸せを再認識することになりましょう。それは、安全・平和、衣食住など、生活する上での多くの要素に及びます。
 幸せな人生にする要素として、自然に恵まれた環境は極めて重要です。そして、智頭の豊かな自然環境、おいしい空気、清らかな水、多様で鮮やかな緑は、都会人がうらやましがる、智頭に暮らす私たちの貴重な財産です。感謝します。

4 わが国が目指した時間効率上の利便性、メディアの発達、モノの豊かさでは達成し得なかったのが「心の豊かさ」です。今日、人と人の関係性が弱くなっていることが、重大な問題になっています。お互いの気持ち・心を通わせあうこと(共感性)の力が弱くなっています。結果として、心の平穏が失われ、家族としての幸せ感が弱体化しています。心が緊張し続け、攻撃的・反抗的になりがちです。一方で、疲労し、心身のリズムを損ない、即ち、心身症に陥りがちで、健康感が弱まります。

5 大人は、自身の体験に基づいて、子どもや他の人を評価し、指示・命令・強要する傾向があります。これらは、共感性を損ない、関係性を壊しがちです。
 家族として、「ありがとう」「うれしい」「すてきだ」など、気持ちを伝える言葉を大切にして欲しいのです。「ありがとう」は、相手を認め、勇気づけます。日々の生活場面で、探してでも、「ありがとう」の言葉が通い合うことが願いです。

 竹下先生との出会いは医学部5年目(小生は湖山の医進過程で特別に音楽教育を受けて“一留人”になっていたので6年目)にポリクリが始まって間もなくの2月でした。昭和50年2月、旧病棟の狭い一室に集まり、ガイダンスを担当された竹下先生の熱い姿勢や病態生化学云々の内容を聞いて、脳神経小児科の選択を決めました。夏休みには無謀にも教室を訪問し、自身の染色体を染める機会をいただき、さらに、竹下先生には逃げられた(?)のですが、有馬先生に仲人をしていただくなど・・・。

 卒後は、大学における研究者としては、全くの落伍者でした。(自己評価では極めつけの最低ランク!)が、幸い、鳥取県立中央病院(県中)勤務が長く、現在も「鳥取県健康対策協議会母子保健対策専門委員会」委員に任じられ続け、昭和56年以降、四半世紀に及んでいます。これも社会小児科学の一環となる領域です。県中では管理職にもなりましたが、縁あって、前線の小児科医に戻ることが出来て、幸せな人生を実践している日々です。

 
脳小同門会原稿  2006/08/12
脳小 = 鳥取大学 医学部 附属脳幹研究施設 脳神経小児科部門
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