'96年10月のある日、白波瀬協子さんから一編の詩をいただきました。彼女は知的にも身体的にもハンディをもつ45歳の未婚の女性です。六歳の頃にハンディを得て以来この生きにくい世の中に適応するために様々な訓練に苦しんできた人でした。にもかかわらず、彼女はあるキリスト教会の中で生き生きと輝いて明るく生きていました。キリスト教会の日曜学校で教師を務めながら、子ども達と一緒に歌う讃美歌を僕とのコンビでこれまでにも2編「祈ってごらんよ」「愛、それはね・・・」を完成させていました。そして、3編目にいただいた詩が次に記す「ありがとう」という詩だったのです。
'97年2月初旬、以前から心配されていた、くも膜下出血によって彼女は天に召され、残念ながらこの詩が彼女の遺作であり遺言となってしまいました。
ありがとう(原詩)
詩:白波瀬協子
私の罪のために十字架にかかって下さったイエス様、
こんな罪人の私を神様のこどもにして下さってありがとう。
私は神様に罪を赦していただきましたが、
私は罪を何度も何度も犯してしまう私で・・・・
こんな自分にもありがとう。
ありがとうのオンパレードの始まりだ。
ありがとうの安売りはしないよ。
ありがとうの言葉はなんて素晴らしいのだろう。
ありがとうの響きはなんて素敵なんだろう。
ありがとうの言葉は簡単、でも難しい。
私は神様に、心からありがとうと言えているのだろうか。
神様、私が心から神様にありがとうと言えますように。
今まで私を育ててくれたお父さん、お母さんにも、
心からありがとうが言えますように。
教会の皆さんに色々お世話になっています。
教会の皆さんに心からありがとうと言えますように。
これからも、いろんな人に、
いろんな事でお世話になることでしょう。
心からありがとうと言える人になりたいです。
この詩は子ども達と歌う讃美歌にするよりは、祈り、あるいは朗読詩の方が元々のイメージを壊さない気がして、そのままに曲を付けることはやめにしました。そして、この詩がテーマにしている「自身の弱さ、脆さ、そして素直にありがとうと言いたいと願う気持ち」をエッセンスに新たな詩を創り、曲を付けたのがアルバムに納められている楽曲です。詩をいただいてから1ヶ月余りで歌が完成し、教会のクリスマス祝会で白波瀬協子さんに聴いてもらいました。今でも、その時の彼女の喜んでくださった姿が目に焼き付いています。当アルバム2曲目の「雨のレクイエム」は彼女のそんな姿も思い浮かべながら創作したものです。
by Yacco
|