マチャプチュレ

【12月30日】

 朝5時50分。まだ暗い。ホテルでお弁当をもらい、今日はサランコットで日の出を見る予定。ただ、自然相手だから、必ず見えるとは限らない。ポカラからサランコットまでは地図で確かめてもわずかな距離。現地で聞けば、ほとんど車で上れて、正味の歩きは300メートルほどだという。な〜んだぁ。普段の里山歩きのほうが、けっこうな距離歩いている。トレッキングというよりは、ハイキング気分。よく整備された山道を一列になって進む。途中、土産物屋があったり、民家や学校があったり、朝早い私たちに、「どうです、帰りに買っていってね。」と声がかかる。「あ・と・で・・・ね。」日本語の売り声も聞こえてくる。まだ暗いうちなから、商売だ。開け放された戸口から家の中が見える。裸電球の下、ベッドで本を眺めている子ども。大声で母親を呼んでいる子ども。そのうちアンナプルナの山々が次第にオレンジ色に染まってくる。夜明けだ。静かに、でも力強く太陽が昇る。あの太陽のずぅっと向こうが日本かぁ。昨日までのぐずついた天気が嘘のよう。空の色がぐんぐんと明るくなってくる。サランコットまで登りつめると、目の前に、大きくマチャプチュレが見える。ひときわよくとんがった三角の峰。マチャは魚。プチュレはしっぽ。

 わっ、わぁ!!こんな風景を見ちゃっていいのかなぁ!!私は海人間である。山登りが楽しいなんて今まで思ったことすらない。山を見てうっとり・・・いくら眺めていても飽きないなんて感覚、わかるはずがないと思っていた。そんな私が、こんな風景の中にいさせてもらっていいのかなぁ。なんだかおそれおおいって感じ。すっごく贅沢な時間だ。スケッチをしながら、山を味わう。