海遊びの一日

 NEW YEAR を迎える瞬間。

 滞在する国によって、さまざまなその瞬間を迎えてきた。2003年は、ホテルの庭の東屋で。海から吹き上がる風と、竹材の床のひんやり感とが気持いい。もうお馴染みとなったツアー仲間と、今年も一緒に新年が迎えられる喜びを、穏やかに味わう。
 プールサイドのバーにはお客もいなくなり、今はホテルの従業員さんたちが憩っている。10月のテロ以来、お客のない時期が続いたという。街のエステサロンに来るお客が8割方減ったとも聞いた。ガイドの仕事がない時期が続き、食べていけず、田舎に帰っていたという話も聞いた。それでも、こうして懸命に働いて、新しい年をなんとか迎えようとしている。カウントダウンを合図に、ラッパをならしプールに飛び込んではしゃぐ従業員さんたちに、「がんばれ!!バリ!!」と私たちも、エールを送った。

 明けて、2003年1月1日。快晴。大丈夫!今日の日中は絶対降らないと、空模様と風が教えてくれる。天気予報がないので、自分の勘だけがたよりなのだが、確信はあった。ツアー仲間と連れだって海で遊ぶなら今日だ。

 「バリならエステよねぇ。」が定番らしいのだが、なかなかそっちに気持の動かない性分である。「バリなら、海よねぇ。」なのだ。今回は、オプションでダイビングがつけられず、ちょっとがっかり。それでも、荷物の中にはマイ・シュノーケルセットを忘れず忍ばせてバリに来た。これさえあれば、たいていの海に潜っていけるさ。ヌサドゥアから出るグラスボードに乗り込んで、沖の珊瑚礁へ。ニューカレドニアの真っ青でどこまでも透き通った海と、どうしても比べてしまう。どことなく、ど〜ぉんよりした海の青さが、アジアだなぁ〜。初めはひんやりと感じた海の水も、潜れば、このうえない心地よさ。寄ってくる魚も色とりどり。水中でのエサやりももう慣れたものだ。魚と戯れ、どこまでも潜っていく。

 「パラ・セイリングもできますよ、どうですか?」と、ガイドさんの誘いに、そうね、日本じゃなかなかチャンスはないかも・・・と、TRY!  別のボートに乗り換えて、対岸の桟橋へ。すでに3組ほどのパラセイルがはじまっている。私の他に日本人のカップルと日本人の男性客が2人、勝手がわからずたちつくしていると、「ハーイ!!ニッポンジン!!」と、メガホンでがなりたてられ、所定の位置につくように促される。顔を見合わす私たち。5人の胸中に同じ思いが駆けめぐった。私たちの他にも外国からの観光客はいるのだが、その人たちにむかっては、こんな集め方はされない。なにさ、これって・・・・!!すべての人がそうだとは言えないだろうけれど、この土地でのある種の「ニッポンジン」観を垣間見たような気がした。

右手の青・左手に赤の軍手をはめ、パラ・バルーンを装着。メガホンの合図で、ボートは走り出す。ぐわ〜んと、上昇。みるみる景色が変わる。上空から見るバリ島は、どこまでもヤシのジャングルだ。これが私の憧れた島。遥か下界からメガホンが呼ぶ。「アォ、アオ、ヒッパッテ!!(青・青・引っ張って)」右側のロープを体重をかけて引っ張れという指示。これが日本人以外だと「BLUE、BLUE」の連呼となる。着地の時間だ。ゆるゆると、海面が近づいてくる。ボートの誘導も上手く、無事波打ち際に着地。5分ほどの空の散歩が終わる。

 昼すぎには、ホテルのビーチに戻り、ヤシの木陰で一休み。と、目の前をボディーボードを抱えたお兄ちゃんが歩いて行く。ホテルで貸し出してくれるらしい。そっかぁ!!これがあったじゃん!!潜るだけだけじゃ遊び足りないと、私も昨年の夏から始めたばかりだ。こんなところで、それもインストラクターつきで、ボディーボードが楽しめるとは思ってもみなかった。たっぷり一時間、波の捕まえ方を教えてもらう。