庄司紗矢香:小柄できゃしゃな体つきで、目立つ顔つきでもない。非力に見える彼女が弾くバイオリンの音色は特別だ。
久しぶりに、2008年11月のNHK音楽祭で、ユーリ・テルミカーノフ指揮、サンクト・ペテルブルクフィル(〜そう旧レニングラード・フィル)と彼女が弾いたチャイコフスキーのバイオリン協奏曲を聴いた。オーケストラの響きから彼女のソロが始まり最初の小節で息を呑み、2・3小節で、彼女の弾く世界に惹きこまれてしまった。(某個人的なホールでの視聴であり、)久しぶりでもあり、実に新鮮な体験になった。
テルミカノーフとの年齢差は45歳。親子以上の差だが、共演関係が出来て8年目となる庄司紗矢香がテルミカーノフを敬愛・信頼し、一方、テルミカーノフも彼女の演奏を心底受容・信頼している相互関係が演奏の様子からうかがえる。TVカメラが彼女をアップでとらえることが多々あるが、再々、彼女は視線を上げ、何と微笑んでいる。時には、感情失禁とまではいかないが、まるで居間で歓談している時に見せるようなリラックスした笑顔とうかがえるシーンも:これは稀有なこと!
◎ 演奏?〜これまた極めて稀なことだが、かつ、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲では始めての体感だが、実に、叙情的・・・ン!何と書いて良いのか・・・。心に染み入る。日本人の細やかな感性、自然・四季の変化、奥ゆかしさ、非戦闘的、穏やかさ、非戦闘的、緻密だが機械的でなく、・・・。技術については、「楽譜を読むと演奏不可能として初演を拒絶した」とされる本曲だが、パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクール優勝していることからも伺えるが、難局であることを忘れさせるほどの曲想に配慮した心穏やかな演奏。勿論、フォルテの個所はオーケストラに負けないしっかりとした(きゃしゃな体つきの懸念を感じさせない)演奏でもある。
◎ 演奏!〜見て、聴いて、感じてくださいと書くしか、自身に能力はない。自身の生涯を通じて、大切にしたい演奏であることは間違いない。
表題? 勿論、セクシャルな関係ではなく、人と人の、立場の異なる世界一流の演奏家同士の彼女とテルミカーノフの関係を知って、男性の立場からすれば、テルミカーノフが彼女・庄司紗矢香と恋して、秀逸な演奏を醸成しているから。一方、傾聴する立場である小生は、庄司紗矢香の演奏と恋している今があるから。 |