平成19年2月定例会代表質問(平成19年2月23日)No.2

2.県政の諸課題

<市町村への権限移譲について>

 
 2004年4月から地方分権一括法の施行以来、片山県政においても住民に一番身近な行政事務はできる限り市町村で行っていただくことを基本理念として、県から市町村への権限移譲が積極的に行われているところです。当初は事務権限について、受け入れに消極的な市町村を対象として、まだら模様の権限移譲からスタートしましたが、現在ではかなりの権限が市町村に移譲されてきました。

 昨年9月定例会でも、我が会派の湯原議員が代表質問において、各市町村にアンケートを実施した結果をもとに質問していますが、その中で知事は、今後一層権限移譲を推進するためには住民という視点が必要となってくると答弁をされています。つまり住民から見れば、身近な市町村が事務を行う方がメリットもある、多少コストをかけても市町村みずから行う方がいいという発想も出てくると述べられ、住民が判断するのに必要な情報を県から提供することも必要ではないかと、一歩踏み込んでおられます。ついては、住民の目線で住民みずから市町村に働きかけようという目的で、草の根自治支援室を設置されているわけですが、権限移譲を推進するために県から直接市町村住民に対して取り組まれていること、例えばこの事務を市町村が行うことによって行政サービスが早くなる、近くで申請できて便利になるなど、どれだけのメリット、効果がある情報提供の取り組みが行われているのか、知事にお伺いします。

 また、今日までの片山県政下において取り組まれてきた権限移譲の状況を勘案して、取り組みの当初と現在では、市町村の意識、特に市町村長の意識についてはどのように理解されているのか、知事の感想をお伺いしたいと思います。
●知事答弁
 
 市町村に対する権限移譲の問題で、住民の皆さんに対する情報提供などが必要なのではないかという主旨のことをおっしゃられたと思いますが、その通りだと思います。とかく権限移譲というと役所間の話し合いとか、ネゴシエーションなどを中心に進めてきているきらいが今日まであります。例えば、中央省庁と知事会を初めとする地方6団体の間で攻防があるとか、県と市町村長さんとの間にこの問題をめぐって議論を行われるというようなことで役所間で議論を進めてきているきらいがあります。

 
一昔前は実はもっと違った形態があって、私が昭和55年に地方課長をやったときに、まさに県から市町村にこれは初めての取り組みだったのですが、市町村に対する権限移譲という作業が一つの大きな仕事としてありました。県側の窓口が地方課、当時の地方課、今の市町村振興室ですけれども、話し合いの相手は実は市町村の組合で、組合との間でこの権限移譲の是非をめぐって議論をしていました。最初は市町村長さんと県との話し合いだったようですけれども、途中で市町村長さんが組合と話しがついたら受けるということで、組合と話しをつけるという何とも変なやり方だなと思って、しようがないので組合と自治労の話しをして、結局話しがついたのが5項目か6項目かで、非常にシャビーなものばかりになりまして、それも実は伊藤議員の選挙区の町でしたけれども、それすらも受けないということがありまして、非常に難儀をしたことがあります。権限移譲を組合が決めるのか、組合が、要するに職員の集団がその是非を決めるのかという、非常にユニークな交渉だったのですけれども、当時は、20数年前はそんな実態でした。

 今は専ら責任者同士で話し合いをするのですけれど、私はこれもやっぱりちょっと筋が違う、本来のあり方から、理念からしますとちょっと違うのではないかと思うのです。やっぱり権限移譲は何のためにするかというと、それは県から市町村に対する権限移譲は、市町村長さんのためではなくて、住民の皆さんのために便宜がどうかという、これが一番のポイントだろうと思います。そうしますと市町村長さんは、例えば厄介だと思うとか、職員の皆さんも面倒くさいと思うかもしれないけれども、住民の皆さんにとって便宜であれば、あえてそこを進めるという姿勢が両者に必要なのではないだろうかと思います。という面で振り返ってみますと、やはり一つの反省点としては一番肝心な住民の皆さんに対して権限移譲を行う場合のメリットとか、場合によってはデメリット、副作用などについての正しい情報が必ずしも伝わっていなかったきらいがあるということは、よくよく考えておかなければいけないことだろうと思っていまして、今後の取り組みとしてはこの点が一つ重要なポイントになるだろうと思います。

 そこで今後どうするかということですが、現状も含めて企画部長の方からその取り組みの方向などについて補足答弁を申し上げます。

 
あわせてこの市町村に対する権限移譲の状況を見て、県内の市町村長さんの意識について、どういうふうに知事は理解しているのかという御質問があったと思いますが、率直な印象を申し上げますと、総論では皆さん賛成です。権限移譲に反対だということを正面切って言われる方はまずいないだろうと思います。これは県内の市町村長さんもそうですし、全国的にそうだろうと思います。ただ、具体的にこれこれの事務はどうかとなったときにはやはり、色々さまざまな反応があって、例えば受けたいのだけれども人材がいない。それを担当する人材が今はいないとか、お金がかかる、行革の時代に厳しいと、こういう答えが返ってくることが多いと思います。そうだろうと思いますが、権限移譲する場合には、当然その潤沢にとまではいきませんけれども財源は、必要な財源は権限移譲とともに交付されるわけですから、財源を見ながらその足らざるところを予算などで補うということはあり得るだろうと思いますし、人の問題はやはり即座にでなくても養成ということは必要だろうと思います。場合によっては県からしばらく職員を出向させるという、こういう手法もあるわけで、総合的に市町村長さんが考えていただければいいと思いますけれども、そういう各論になると消極的になる面もないわけではない。

 ただ最近はやはり、市町村長さんにおいて温度差があるという印象があります。あえて積極的にこの問題に取り組もうという市町村長さんもおられます。そうでない場合もあります。ですから結果を見ていただくと、今県内でまだら模様の権限移譲ということをやっていますけれども、それは本当にまだらが出てきており、かなり積極的に権限を取り込んでおられる市町村とそうでない市町村とが分かれてきているという状況です。
 
●上場企画部長答弁

 
 権限移譲のメリットや効果を住民の方に考えていただくということは、お話のとおり大変大事なことですので、従来そういうことが不足であったという反省も踏まえて、昨年の暮れ、県政だよりの12月号で特集を組みました。地域のことは自分たちで考え決めていくというタイトルを組み、住民にとっての地方分権の意味だとか、権限移譲の現状や方向性、それからその住民自治ということで南部町や三朝町の事例を御紹介したわけです。

 これからの作業ですが、1年後の来年、平成20年の春に1つも2つも権限移譲を進めたいと考えており、そういう考え方や作業工程について、県下の市町村長さんに御説明をし、具体的な作業に庁内で入っております。今知事に属します事務権限の全部を、全庁的に洗い出しており、2月いっぱい間もなく、企画部長あてに各部から報告いただき、3月中にはヒアリングもして洗い出しをしたいと思っております。

 4月になりますと、分権自治推進室を企画部地域自立戦略課に設置していただき、スタッフも増強してそれらの事務の中からパッケージにして何を移譲するのかという作業に着手したいと思っております。その際には、市町村が受け取りやすい、取り組みやすいということと同時に、住民にとっての利便やサービスの向上を実感していただく、考えていただくということが、眼目点になってきます。6月ぐらいには、市町村との協議に入りたいと思うのですが、そういう行程を通じて、住民の皆さんに十分に情報を提供するとか、意見を聞くとか、考えていただくとかということに意を用いていきたいと考えております。

<市町村への権限移譲について>2



 市町村への権限移譲について、先ほど答弁がありましたが、権限移譲が単に人、財源に関して市町村の負担増だけに終わらせてしまっては、分権の意義がないわけで、先ほど答弁がありましたように、やはり住民の視線という部分を大切にしながら、権限移譲を進める。そのためには先ほどありましたが、速やかに効果の検証、そういうものを行っていただきたいということを要望したいと思います。