平成19年2月定例会代表質問(平成19年2月23日)No.3

2.県政の諸課題

<三徳山の世界遺産登録について>

 
 平成14年9月の代表質問において、三朝町が三徳山の世界遺産登録に向けて運動を展開されていることに対して、県としても積極的に支援すべきでないかと提言したところ、知事から登録の有無にかかわらず、三徳山の魅力や価値を発信していきたいと答弁をいただき、その後県の積極的な後押しもあり、昨年11月には県と三朝町の共同作業で、世界遺産の国内候補地として文化庁に登録に向けた提案書の提出にこぎつけることができました。結果は文化庁の文化審議会で国内候補地への暫定リスト入りは見送られたものの、今後も継続審査が適当な遺産と位置づけられ、今後さらに調査、審議を進めていくことが必要とされました。このことは町を挙げての今日までの努力と三徳山の一定の価値が認められたということで、これからの活動にも弾みが出る結果となりました。三徳山の世界遺産登録に向けた活動に対するこれまでの評価、今後の取り組みについて片山知事の所見をお伺いします。
 
●青木文化観光局長答弁
 
 世界遺産登録への取り組みについては、平成13年度以降、三朝町が中心となって進めてこられたわけですが、一定の成果は上がってきていると思っております。例えば、投入堂―現存している投入堂の建築年代というのが、年輪年代測定法で平安時代後期であるということが判明したということだとか、あるいは三佛寺所蔵の銅鏡が海外調査を実施したところ、中国の浙江省の銅鏡と同一工房の作と判明したということもわかっております。それから平成の大修理というのが、先般行われたわけですが、投入堂が実は丹塗り、赤色塗料で塗られていたということなどが判明しつつあるということです。

 また地元集落が中心となり、50年ぶりに御幸行列を復活させたということもありましたし、また地元の官民で組織された三徳山を守る三朝町の会というのも、この間設立され、いろいろな活動に取り組んでおられるところです。また昨年は、1,300年祭というイベントが、町、県、地元で協力して開催されたということで、以上のようなこともまた特別番組等で広く全国的にもその魅力が紹介されたということだった思います。

 この間、県としても調査、修理への支援とか、あるいはこういったものを共同実施する、1,300年祭を初めとしてイベントの開催などにより、支援を行ってきたところです。世界遺産の登録については、従来国の一本釣り的なやり方だったのですが、昨年9月にその手続きが改正をされて、県と市町村が共同で提案書を申請して、これを文化庁の審議会の中に特別委員会を設置して審査するという、システムの変更がありました。これを受けて町と県で協議して、改めて世界遺産にふさわしいと考えて、昨年11月末に国に対して提案書を提出したところでした。

 今年1月23日にその審査結果が文化庁から示されて、三徳山は継続審査ということになったわけです。この審査結果を見ると、三徳山については山岳修験の場として急峻な地形と独特の意匠構造を持つ建築が調和し、神仏習合が進んだことを示す事例として価値は高いという一定の評価はあったということです。また一方、その今後の課題というのもかなり明確になり、いわば三徳山が世界遺産を目指す中で、どういった立ち位置にあるかというのがある程度明らかになってきたと考えており、三朝町とともに前向きに受けとめたいと考えているわけです。

 ただ、今後の課題というのはなかなか容易なものではないと思っておりまして、例えば三徳山全体の調査自体が不足しているのではないか。また国内に類似した資産があるものですから、その中で三徳山の特異性を解明しなければいけないというようなこと。それから一般的な知名度はかなり上がってきていると思うのですが、やはり文化資産としての認知度自体、これはやはり不足しているのではないか。こういった課題も明らかにされたわけなのです。したがって、登録への道というのはやはり夢ではないと思っていますが、指摘された課題に留意して、地元三朝町と協議しながら対応していきたいと思っております。例えば必要となる調査を実施したり、あるいはその学識者の協力を得て三徳山の特異性の解明を進めたり、関連資産の掘り起こし、地元の機運の醸成、こういうことには町と一緒に取り組んでいきたいと考えております。

<三徳山の世界遺産登録について>No.2

 
 県議会でも常任委員会が県外調査ということで、県外の世界登録遺産に登録を受けたり、国内候補地暫定リスト入りしているところを視察調査に行っています。そうした中で、リストに入ったことにより、多くの観光客などが訪れて、逆に貴重な自然そして遺産が損傷されるという事例があるということを聞いております。確かに多くの皆さんにすばらしい三徳山を間近に見ていただきたいという気持ちはあるわけですが、投入堂までの登山道には長年の風雨だけでなく、近年多くの登山者の影響と思われる痛みの激しい箇所もあります。

 また、毎年登山者の事故も発生し、死亡事故も起きているわけですけれども、やはり今後そうした世界遺産登録に向けた活動も重要ですが、登山者の保護対策や安全対策、また一体となっている周辺環境の保全についても考えていかなければならない重要かつ喫緊な問題であると考えております。知事の御所見をお伺いしたいと思います。

●知事答弁
 
 三徳山の世界遺産登録に向けた運動に関連して、この種のその貴重な財産というものを破壊から免れる、その他の課題について、そのとおりだろうと思います。

 世界遺産登録ということになりますと多くの皆さんに知っていただいたり、体験していただいたりということは必要ですし、そうなれば逆に今度は自然破壊とか文化遺産の破壊ということが起こってくるわけで、現実に奈良県でしょうか、和歌山県でしょうか、世界遺産登録をされたところで、もう既に反対運動が起きているということも、私も伺ったことがあり、なるほどこの種のジレンマというのはあるのだなと思いました。よく気をつけておかなければいけないことだと思います。その他にも幾つか課題があると思いますが、それらについて文化観光局長の方から御答弁申し上げます。
●青木文化観光局長答弁
 
 三徳山の持つ高い価値については、観光資源などで活用すると同時に、その価値を損なわないように保護して、そしてこれを後世に伝えていくということが大切だと思っております。世界遺産のコンセプトがまさにそういった趣旨だろうと理解しております。その三徳山の価値については、投入堂を初めとする建造物群、それから重要文化財に指定しております多くの文物、これだけではなくて、それを取り巻く周囲の景観とか環境が一体となって構成されているものと考えており、これまでもいろいろな保全措置は取っているところなのです。例えば、その文化財保護法で名勝史跡に指定されるとか、あるいは県の県立自然公園に指定することによる規制ですとか、鳥獣保護法で鳥獣保護区特別保護地区に指定するというような、公的な規制というのもありますし、あとは三徳山の入山制限を、これは三佛寺さんの方で規制をしておられて、降雨時それから冬季、冬には入山を禁止しておられます。また登山道保護のために、わらじを履いての入山を推奨したり、こういったこともしておられるところです。
 
 世界遺産についても、この登録条件が幾つかあるのですが、その一つの柱として、その万全の保護措置というのが求められているところで、その中で例えば三徳山であればその資産そのものだけではなく、それを取り巻くいわばバッファー・ゾーンといったところについても、一定の作業が求められているものですから、三徳山の周辺地域のこの保全をどうするかというような問題だとか、あるいは御指摘のような、近年入山者が非常にふえていると、こういった状況も踏まえて、三徳山の保護措置の強化、それから安全対策、これは地元の三朝町と一緒になって検討していきたいと考えております。