平成19年2月定例会代表質問(平成19年2月23日)No.5

2.県政の諸課題

<看護師の確保対策について>

 
 今、全国的に看護師の争奪戦が繰り広げられ、中には看護師が確保できないため、病院または病棟が閉鎖に追いこまれるなど、異常とも思われる事態が生じ、大きな社会問題になっております。このことは医療現場における問題だけではなく、私たちの医療を受ける環境が制約されるなど、地域医療の確保についても大変懸念される問題です。このことは鳥取県においても他人ごとではなく、昨年10月末時点で看護師の有効求人倍率2.5倍、264人の不足で、特に今年に入って約300人余りの慢性的な看護師不足が続いております。こうした状況下にあって県立病院の看護師の充足状況はどうか、また不足しているようであれば、その確保対策についてどのように考えておられるのか病院事業管理者にお伺いします。

 また鳥取県全般として、看護師確保の対策についてはどのような対応を考えておられるのか知事にお伺いします。

 さらに早急に看護師の養成計画を見直し、倉吉や鳥取の県立看護専門学校の定員をふやし、すぐれた人材育成を確保するための施策を講じるべきだと考えますが、あわせて知事に御所見をお伺いします。


●知事答弁
 
 県内の看護師の確保対策ですが、これまでもこれは大変大きな医療現場の問題として、看護師の確保対策については議論もされ県としてもできる限りのことをやってきておりますが、なかなか期待どおりには物事は進んでいないということだと思います。結局、これは世の中に必要とする職業、それに従事される方、これの需給のバランスが取れていないということで、どこに一番の原因があるかというと、やはり需要と供給とがうまくマッチングしないということだろうと思います。それは一般論ですけれども、どういう原因が考えられるかというと、社会の期待に対してその職業の評価が必ずしも高くない。それは例えば働き方の問題とか給与などの処遇面が期待ほどには整備されていないということが、一般論としては言えるだろうと思います。

 もう一つは、例えばこれは医師の場合などに言えますし、弁護士などにも言えますが、その供給側について政府なり行政なりがハードルを課していて、そこが円滑に機能してないという面があるのかもしれません。一般論ですけれど。看護師の場合には恐らく前者の場合、期待と処遇とのミスマッチがあるのではないか。これは例えば医療費制度の問題にもなります。医療制度全体の問題の中で、本来は解決されなければいけない問題だと思います。そこが変わらない中で地域ごとに、この問題に対応するために県なりがもがいているということだと思います。ですから、根本的にはこれは国全体の政治の問題として、医療費制度を中心とする医療制度の見直しの中で、この看護師の不足問題というのは解決しなければいけないと思いますし、それがうまく進まないからといって手をこまねいているわけにもいかないので、先ほどの表現をすればもがいて、もがかざるを得ない状況ですので県としても必要なことを、できることをやってきているということです。

 今般の骨格予算の中ですけれども、できればということで、この確保に資するという観点で幾つかの施策の充実なども図っておりますので、この点については福祉保健部長の方から補足答弁を申し上げます。

 これに関連して、県立看護専門学校の定員をふやしたらどうかということ、これは幾たびも議論があるのですが、確かに定数をふやしてそれで期待するその質を確保した上で、量的にも確保できれば一番いいのですけれども、なかなかそう単純にはいかない問題点、隘路もあるということで、この点についても福祉保健部長の方から御答弁申し上げます。

●田中福祉保健部長答弁
 
 御指摘のとおり全国的に看護師不足ということで、病院間で争奪戦というような様相になってきております。県としては、4つの場面でこれについて取り組みを考えております。

 まず学校段階ですけれども、中学生とか高校生、専門学校、大学受験者等を対象とする事業として、1日看護師体験授業ですとか、県立の看護学校でのオープンキャンパスの開催。それから中学校とか高校の総合学習で看護師を社会人講師として活用していただくこと。そういうこともしていますし、平成20年度ですけれども、鳥取大学の医学部の保健学課に地域学を設置するということを計画されていますので、県としての奨学金の創設というのは、議会の方にお願いしております。

 看護系養成学校在学生を対象とする事業ということで、就学資金の貸し付けを設けておりますけれども、これについても、これまでも対象者を拡大してきています。それから県内への就職説明会の開催ですとか、さまざまな職場を体験するようなサマーセミナーの開催ですとか、県外に進学しておられる方がおられる学校については、学校に出向き県内就業を推進するようなこともしております。

 再就業の推進ということで、働いておられないで家庭におられるような有資格者の方に現場に復帰していただきたいということで、ナースバンクスで県内医療機関への情報提供をしていますが、求職者の方は子育てをしながら昼間だけ働きたいということですが、求人側の方は夜勤をしてほしいということで、このあたりでミスマッチが起きているということです。

 
あと離職防止ということで、各病院が離職防止に取り組むのに参考になるような事例研究ですとか、看護師の業務を負担軽減するような簡素化の工夫検討についての管理者を対象とした研修会とか検討会を開催しております。県としての決定打というのは今のところありませんが、今後とも県内の看護師不足解消のために、さまざまな施策に取り組んでまいりたいと考えております。県立看護学校の定員増の関係です。確かに看護学校の定員増というのは、看護師不足解消の一つの方法と考えておりますが、現実のことを申しますと、大学志向により、特に成績上位の合格者の方で非常に辞退者が多いということで、優秀な学生の確保が困難になっております。例えて申しますと、鳥看ですと54人合格しても、昨年ですけれども24人辞退ができております。定数40に対し実際には30名の入学ということで、単純に定員増をしても医療機関が求める人材養成にこたえられるかどうか、優秀な人材が確保できるかどうか疑問があるところだと考えております。ということで、先ほど申し上げたような総合的な看護師確保対策を展開するとともに、平成15年、16年にかけて就学資金の対象者を拡大しておりますので、こうした効果も見きわめながら、両県立学校の定員増については十分な検討が必要だと考えております。

●坂出病院管理事業者答弁
 
 新年度の看護師の見通しですが、まだ確定的には申し上げられませんけれども、中央病院の場合は、今やっております10対1の看護は十分できると思います、今年よりも幾らか人数がふえますので。ただ、目指している7対1看護にはまだ不足しております。恐らく20人ぐらいまだ不足。これはパートも含めてですけれども、不足するのではないだろうかと思っております。

 厚生病院の方は、新規採用の看護師を中央病院の方に手厚く貼りつけたということもあるものですから、今と同じぐらいの数を確保するのがやっとだろう。今は10対1看護をやるのも相当厳しい状態です。したがって、来年度厚生病院の場合は年度中途の退職者とか、あるいは産休育休の出入りで、多分産休育休に入る方がまだ多いと思いますから、来年度はかなり厳しいという感じを持っております。全体として現状維持でいこうとすれば、県立病院の場合は大変恵まれておりまして、何とかなるのですけれども、やはり定体制7対1看護を目指そうとすると厳しいという状態です。対策ですが、これはもう愚直に県内外の看護師養成機関をお願いしてまわるとか、あるいはPRをするとか、就職ガイダンスで病院のいいところを紹介するとかということを、続けていく以外ないのですが、私自身ちょっと気になっていますのは、新人の看護師を現場にどうやって早く溶け込むようにするかというところ、それからキャリアアップをどういうふうに図っていくかというところ、一応の体系はできているのですが、それを人にわかるようにうまく説明できる形にまだなっていない。ですから、その体系化、それから目に見える形にするというところを何とかしたいということで、両病院の看護局長にはお話をしているところです。

 また採用試験は、この2年間で大きくやり方を変えて、1回目を10月ごろ、これは年齢制限もかなり引き上げてやるようにしております。2回目を2月ごろ、追加試験をするということをこの2年間やってきておりますが、今の一番最初申し上げたような状況ですから、やはり随時に募集して採用できるという形にもっていきたいと。それからもう1つ、採用しても非常勤で採用して、これまでは2年、3年正規職員になるまで非常勤のままという形、これは今回改正条例をお願いしておりますけれども、それぞれの処遇改善ということもやって、いろいろなことを考えながら少しでも、一人でも多く看護師が採用できるように持っていきたいと思っております。

<看護師の確保対策について>2

 
 
 看護師を県内に定着させる確保対策として、県内の医療機関等で5年間看護職員として業務に従事した場合には、就学資金の返還免除制度があります。200床未満の病院なら全額免除、200床以上の病院は半額免除となっております。先ほどありましたように、今200床を一つの上限区分と言うか、区分けとしてでなく、全般的に看護師不足が今続いているわけですので病床の区分に関係なく全額免除にすべきだと思いますけれども、知事の御所見をお伺いします。

 病院事業管理者に1点お伺いします。
 先ほど看護師不足、県立病院でもありました。そうした中で厚生病院の病棟閉鎖も検討されていかなければならないのではないかという話を、私は仄聞しております。それについて病院事業管理者はどう考えておられるのか。中部地区においてはやはり基幹病院ですので、いろいろな部分で影響も出るわけで、それらの部分についてもしお考えがありましたらお答えいただきたいと思います。

●知事答弁
 
 看護師の確保対策として、就学資金を一定の要件のもとに免除するという、インセンティブ効果を期待した制度です。その際に、200床未満の病院に就職し一定期間いた場合には全額免除をする。200床以上の病院の場合は半額しか免除しないと、こういうことをしているわけで、これは趣旨は小さな病院、中小の病院に看護師が著しく不足している、これの緩和策と言いますか、そこにできるだけ就職してもらいたいという期待を込めての制度でます。これが唯一絶対かというとそれはそうではなくても、病床数に関係なく医療機関に就職すれば、それで免除、全額免除しますよということも、それは一つの政策選択としてはあるだろうと思います。その際に想定されるのは、今よりも中小の医療機関の看護師がもっと不足するのではないか。大きな病院にさらに集中するのではないかということです。それをどう考えるかということで、これは政策論、選択の問題なのです。

 我々としては、やはり大きな病院もそれなりに苦労されている。県立病院でも苦労しているわけですから。けれども、中小の方の看護師不足の苦労の方が、医療機関の数も多いし、大変なのではないかという着眼のもとにやっているわけです。議会、これは予算の中身の問題ですから、議会の方で、いやもう小さいところも大きいところも一緒でいいということを皆さんが考えられるのであれば、その旨おっしゃっていただければ、どういう政策選択をするかというのはまた別な道があるかもしれません。一応、今私が申し上げたような観点で、予算は編成していると。それも含めて御審議いただければと思います。
 
●坂出病院管理事業者答弁
 
 厚生病院の問題ですけれども、今の看護師の状態がもっとひどくなれば病棟閉鎖を考えざるを得ないということはあるだろうと思います。ただもう一つの考え方は、実は今年度、厚生病院の稼動率、若干また落ちていまして80%そこそこです。ですから300床ありますから、大体240床ぐらいを使っているという状態ですので、経営的に見ると一つ病棟を閉鎖した方がいいということになるわけです。ただこの場合、非常にベッドコントロールが難しくなりますので、これまでやらずにきております。ただ、本館の改築ができあがった後、この春からは既存の病棟の改修に入りますので、どうしても一つずつ閉鎖しながら、順繰り順繰りに回していかなくてはいけないということがありますので、当面は一つ減らして工事をしながら運用していく。ただ私の気持ちとしては、当然300をベースにして考えてそのための看護師をきちんと確保していく。やっぱりこれが厚生病院としての責務であろうと考えております。


<看護師の確保対策について>3

 
 厚生病院、改築問題とか看護師問題、いろいろな部分で複雑に絡んで非常に厳しい現状にあろうかと思います。ただやはり300床という一つの今基準があるわけですが、もし厚生病院のその病床が非常に今空いているという状況、それは何なのかという部分も、私はしっかりと点検等をしていただいて、本当に厚生病院の起用が減少している、そういうものもしっかりと把握しながら点検していただき、そういう部分を検討していただきたいと思っております。