平成19年2月定例会代表質問(平成19年2月23日)No.6

2.県政の諸課題

<東郷池のシジミ残留農薬について>


 昨年11月、島根県の宍道湖内で採取されたシジミから食品衛生法に定める基準値を超える残留農薬、これは除草剤に使われているチオベンカルブが検出され、宍道湖漁協ではシジミ漁の操業を自粛しておりました。これを受け昨年12月、鳥取県内のシジミの安全性を確認するための検査が実施されたところ、東郷池において採取されたシジミから食品衛生法の基準を超える残留農薬、これまた除草剤に使われているクミルロンが検出され、東郷湖漁協では直ちに出荷を自粛されています。東郷池のシジミから検出された除草剤クミルロンは、0.07ppm。食品衛生法の残留基準値0.01ppmの7倍に当たるとされております。これは昨年5月に施行された食品衛生法の中で定められている、ポジティブリスト制度が適用されるものです。これによると残留農薬の基準は米の場合、水田除草剤として直接使用された場合、残留基準が0.1ppmと定められておるのに対して、シジミの場合は残留基準がないため魚介類の一律基準の0.01ppmが適用され、これを超える農薬が残留する食品の流通が原則禁止されているものです。この制度は直接使用する米への残留濃度は想定されているものの、川下の生物に与える影響は想定されていない制度で、十分な検討や想定がされてないまま法制化された欠陥制度であると思うのです。

 
昨年には同様な事案として、ナガイモには基準があるが長芋に実をつけるムカゴには基準がないため、ムカゴを出荷できなかったのです。そもそもこのポジティブリスト制度、健康を守るために示された残留農薬の基準値ですが、直接農薬を使用する米が0.1ppmであるのに、想定されていないシジミが0.01ppmとより厳しく基準値が設定されているという矛盾も指摘されております。また東郷池のシジミの場合、シジミ汁でいうと1日に340杯の汁を吸わなければ、健康に影響を及ぼすことがないと言われているほどの基準値です。今後の対応策として、農業者に対象農薬を使わないよう要請されたり、魚介類の特性を考慮した個別の基準値を設定されるよう国に対して要請をされたりしていますが、今一番困っておられるのはシジミ漁で生計を立てている事業者の皆さんです。県としてはこのまま法が改正されるまで、またはシジミの残留農薬が自然に消えるのをじっと待って、事態が収拾されるまで静観されるつもりなのか、知事の御所見をお伺いします。また、シジミの残留農薬が自然に基準値以下になるまで、どの程度の期間を要すると見込まれているのか、あわせて知事の御所見をお伺いします。


●知事答弁

 
 東郷湖産のシジミが今出荷停止といいますか、出荷自主規制ということになっておりまして、その問題で関係者の皆さんはさぞかし頭を悩ましておられるのだろうと思いますし、期待されていた所得が得られないということで、経済面での支障もあるのだろうと思います。現時点で、しかしどうすればいいのかといったときに、その規制の内容はともかくとして、その規制に引っかかっている。要するに基準値を超えている数値が出たときに、それを無視して出荷していいですよとは言えないわけです。そうしますと出荷停止というのが当面続くのは、これはもう現状ではやむを得ないだろうと思います。

 伊藤議員がおっしゃったように、その複数の観点からの規制がめぐらされていて、それぞれが必ずしも整合性が取れていないではないかというのは、そういう面があるのだろうと思います。ムカゴのケースでもやっぱりありましたけれども。今回のケースも農業面での規制、それから川下といいますか、それが流れて湖に入ってそこでシジミに影響するわけですが、特に魚介類、特に貝の場合は蓄積しますので、その場合の基準とか、その貝が人体に与える影響がどうかといういろいろな観点でしょうけれども、それらが必ずしもすべてが整合的に制御されてないということの一つのあらわれだろうと思います。これはぜひ国の方で全体のバランスが取れるように、整合性が取れるような点検をしていただきたいと思います。

 それが今日できてない状況のときに伊藤議員のおっしゃるには、では県としては法令が改正されるまでじっと待つのか、それからシジミの中の農薬の値が基準値に下がるまでじっと待つのかとおっしゃいますけれども、それ以外何か妙案があるでしょうか。もしあるのならお聞かせいただきたいのです。みんな怠けているわけではなくて、本当にそれ以外はないのです、両方待つしか。ですから、当事者の皆さんはそれはさぞかしお困りでしょうけれども、しかしそれを今すぐここで打開するような妙案がないというのが現状で、もし何かいい秘策でもあったら教えていただければと思うのですけれども、現状などについては生活環境部長の方から補足答弁をいたします。

 

●石田生活環境部長答弁
 
 東郷池産シジミについて、現在出荷を自粛していただいているということで、我々としても大変残念に思っているところで、県としてもできるだけの対応をしたいと思っています。

 既に農業団体ですとか、農薬の取扱店等に対して、この農薬の補充や販売の自粛をお願いしております。それからこの農薬に限らず、除草剤などを使用した際に、川にすぐ流れ出てしまわないように、水をためておく、田んぼに水をためておく期間、これを延長していただくようにもお願いしております。それから伊藤議員にも触れていただきましたけれども、国に対してもそういう水産動植物に対する残留基準をきちっと科学的知見に基づいた適正な値に設定していただくようにお願いしております。それから漁業者の皆さんの意向も踏まえて、水質などについて引き続き継続的にモニタリングをしていきたいと思っております。それからこの基準をクリアーするまで、どのぐらいかかるのかということですが、この農薬の、シジミにおける残留について、国なりあるいはこのメーカーについても資料を持っていないということですので、今時点でいつどのぐらいの期間でこれはクリアーできるかというめどは立っていない現状です。そういうこともあって、現在栽培漁業センターで生環研究所が連携して、農薬の残留濃度について低減方策を検討中です。これからも少しでも早くこの生産が再開できるように、どういったことが考えられるかよく検討しながら取り組んで行きたいと考えております。

 

<東郷池のシジミ残留農薬について>No.2
 
 ここに昨年12月に発行されました鳥取NOW第72号があります。知事知っておられますね。表紙にも東郷湖のシジミ漁の絵が描かれております。「光れ!湖の黒ダイヤ、ヤマトシジミ復活の軌跡」として特集が取り組まれております。黒褐色に輝く殻とむっちりした大粒の実、そしてコクのあるうまみを備えた東郷湖のシジミ。かつては黒ダイヤと呼ばれ関西市場で高い評価を受けて取引されたと言います。乱獲により一時は急激に減少した漁獲量を、漁の自主規制、禁漁区域の設定、稚貝の放流、漁場の整備、湖底の清掃、また鳥取大学、県栽培漁業センターなど行政と連携して、シジミの生育に適した水質環境の調査など関係者が賢明に取り組んできた結果、昨年当たりからようやく成果が見え始め、組合員に活気が出てきたと書かれております。

 今回の件は、まさにこの記事の直後の出来事だったのです。国の不十分な制度のために一番困っておられるのは先ほど申しましたが、再生にここまで取り組んでこられた東郷湖のシジミ漁の漁業者の皆さんです。追い打ちをかけるように、この漁業者がシジミ漁を自粛されている中、悪質なシジミの密漁などの報道もなされております。漁業者にとってはまさに泣きっ面にハチの状態であると思います。その苦悩を察すると本当に心が痛む思いです。今回の残留農薬問題は、漁業者みずからの責任や、自然作用によるものでなく、行政の中で作られた被害者でもあるわけで、私は行政としての責任があると思っておりますが、知事の御所見をお伺いしたいと思います。

 また県として漁業者の思いを聞きながら、早急に解決策が今ないということなのですけれども、必要とされる支援策をやはり検討すべきだと思いますけれども、あわせて知事の所見をお伺いしたいと思います。

●知事答弁
 
 東郷湖のシジミの自粛の問題で、ここに至ったのは行政の責任ではないのかとおっしゃいました。行政のというのは、具体的にはどこのという意味でしょうか。少なくとも県は責任を負うべき立場にはないと思います。国にあるかどうか、これもわかりません。これは一般論ですけれども、この種の場合にどうやって損失をリカバーするかという問題だと思うのです。漁業者の皆さんにも責任はないです。漁業者の皆さんに何か帰責事由があって出荷停止に至ったわけではないのです。ただ、今のその法令のもとでは出荷することは禁止されているわけですから出荷できない。これを自分に責任がないのにどうすればいいのか。やっぱり国とか行政の責任ではないかとおっしゃりたい気持ちはわかるのですけれども、これは極端なことを言えば、裁判をやってみないとわからないと思うのです。例えば、これは本当一般論ですけれども、例えば出荷できないということになりますから、当然利益を逸失することになります。当然そこには損害が発生しているわけで、この損害をどうやって補てんするかということになるわけです。一般論で言うと、例えば出荷、今回自粛ですけれども、出荷停止ということになった場合に、その措置がおかしいと、その措置の背後にあるその基準がおかしい、国がつくっている基準がおかしいと言って争う、それはあると思うのです。それはやってみないとわかりません。それからもう一つは、原因者は農業者だと。農薬を使った農業者だということで、その民事の争いで農業者に損害賠償を請求する。こういう過失になるのでしょうかということでやる。そうすると農家の皆さんは、しかし、私は基準値どおりの使い方をしているのだから責任はないはずだという争いになるだろうと思います。その際に、先ほど申しました整合性のとれてない基準の体系があることがおかしいということになって、そこに国が裁判の関係者として引っ張り出される可能性はないわけではない。ただ、これはいずれの場合もやってみないとわからないと思います。そういうことは、漁業者の立場に立って、ちょっと法テラスのかわりみたいなことを私申しましたけれども、法テラスに行かれればこんなアドバイスが得られるのではないかと思います。ということで、少なくとも県が、行政ですけれども、県が責任を負う立場にはないということは申し上げておきたいと思います。

 何らかのそのサポートが必要なのではないか、支援が必要なのではないかということですが、それは例えば損害賠償とかそういう意味ではなく、例えば今の事態をできるだけ早く解決するためのサポート、これはあり得るだろうと思います。それは、例えばその一つは国に基準の見直しを要請するということ、これはやっておりますし、これからも県としてやっておかなければいけない、やっていかなければいけない問題だと思いますし、もう一つは例えば水質検査ですとか、モニタリングですとか、このような県としてやるべきことは、もうサポートとしてやっていかなければいけないと思います。

<東郷池のシジミ残留農薬について>No.3
 
 確かに国の制度的な問題だと思うのです、これは。ですから、本当に不満でしたら裁判してくださいと言ってしまえばそれだけなのですけれども、本当に現実困っている業者がおられるという事実はあるのです。だから、県としては何もできない、どうすることもない、不満があれば訴訟してくださいというだけでは私は県の行政機関としていいのですかと。何もできないかもしれませんけれども、その辺はやっぱり本当に県としてももう少し業者の皆さんにといいますか、そういうスタンスの中で本当に何らかの努力といいますか、摸索をしていただきたいと、これは要望ですけれどもそういう思いを持っております。