平成12年9月定例会代表質問(平成12年9月22日)No.7

2.県政の諸課題

<雇用のためのニューディール政策について>


 厳しい経済情勢が続く中、県政の重要課題は雇用の確保として平成14年度から始まった鳥取県版、雇用のためのニューディール政策。県職員を初め教職員、警察官、病院職員など1万2,000人を超えるすべての職員の給与を原則5%削減し、これにより捻出した財源をもって民間の雇用を創出するための大胆な支援、行政においての直接雇用の創出など、まさに片山県政の目玉として取り組まれてきた政策の一つです。

 このニューディール政策は、平成14年度から16年度までの3年間の職員の給与削減により、平成14年度から19年度までの6年間の雇用の確保となっており、いよいよ来年度が最後の年になります。この間で職員の給与削減により捻出される財源総額は幾らになるのか。その効果として、民間でどの程度の雇用が図られ、特に常用雇用としての実績見込み、さらには行政の直接雇用により見込まれる実績はどの程度なのか。また経済波及効果として、どの程度見込まれているのかお伺いするとともに、この政策のために協力していただいたすべての職員の皆さんへの思い、並びに知事のニューディール政策への総括をお聞かせください。
 
●知事答弁

 
 いわゆるニューディール政策、雇用のためのニューディール政策。給与を一定期間削減して、その財源を雇用の創出なり充実拡大に当てるという、こういう政策を鳥取県では取ってきて、それによって財源の総額が幾ら確保されたのか。また民間でどの程度の雇用が図られたのか。行政の直接雇用でどの程度の実績が見込まれるのか、これらの点については、総務部長の方から御答弁申し上げます。その総括をして雇用のためのニューディール政策についての私の感想を述べよということですが、これは我が国の景気が非常に落ち込んで、その影響を受けて民間の労働市場では随所でリストラとか、採用の手控えというのがあり、雇用情勢が非常に悪化した時期がありました、今はかなり回復しましたけれども。その最悪ともいえる時期についつい行政も実は同じことをやるわけで、採用を見合すとかということになるわけです。これは感情としてはわからないでもなくて、民間があれほど血を出し汗を流しているときに、やっぱり行政も税金によって支えられているわけですから、民間と同じようにリストラしたり採用を手控えて、行政をよりスリムにしようという、これは非常に理解しやすい、共感を得やすいことなのですけれども、実はこれがその経済学でいうと合成の誤謬ということになりかねないわけです。合成の誤謬というのは、部分的には正しいことをやっても、全体としてはより結果が悪くなるということでして。

 部分的には官もリストラをやってスリムにするというのは正しいのだろと思いますけれども、民間がスリム化をしているときに行政もあわせて同じようにスリム化すると労働市場はさらに冷えてしまう、悪化してしまうということになるわけで、これをどう考えるかということで、韓国などでは逆に民間が雇用を絞める場合には行政が少し門戸を開こうということをやって、バランスを取ることをやっているわけです。これは国策としてやっているわけです。我が国ではそういうことは国策としては取られませんでしたけれども、鳥取県ではその大それたことはできないけれども、多少そのそういうときには影響、民間のリストラなどの影響を緩和するような政策があってもいいのではないかということで、雇用創出ということをみずから、行政みずからも、それから民間の雇用創出の支援等もやったわけです。その際に、では官が水ぶくれしていいのかということは当然いけませんので、そこで職員の皆さんの協力を得て、基本的には5%給与カットすることによって、その財源を捻出する。したがってトータルコストはふやさない。その中でいかに雇用人数を確保するかということをやったわけです。かつ民間における雇用創出ということも期待しましたし、それに対してかなりのお金も投入しましたけれども、官の側でも単に職員の数をふやすという肥大化路線では毛頭なくて、本来ならば定数職員配置がないのですけれども、本当は必要な部門がある。それならば新たに配置しようと、充実させようと、そういう観点でやったのがニューディール政策、雇用のためのニューディール政策でした。そこでやりましたのは、例えば官の側ですと、いわゆる30人学級を施行するというようなこともありましたし、それから県立高等学校の司書を常勤化をするということも一つの局面でありした。

 他にもいろいろありましたが、私はこのニューディール政策の総括をすると、非常によかったと思っております。よかったというのは幾つかのポイントがありますけれども、一つはやはり多少なりともその雇用状勢、労働状勢が悪化したのを緩和した、中和したという意味合いがあったと思います。今はかなり民間の雇用市場というものも回復してきましたので、少しずつ官の側は徹集する時期だろうと思って、そうやって定数管理などもやっておりますけれども、一番悪いときに救いの手を差し伸べたというとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、悪化した労働市場というものに中和剤を注入したという意味はあったと思います。

 もう一つは、官の側で言いますと、やはりあのときにあえて定数をふやしてでも必要な行政施策を推進しようということで合意を得ましたので、その結果30人学級も完全ではありませんけれども、ある程度進んでそれなりの実績を教育行政の現場では上げていただいているということ、これは大変よかったと思っております。ニューディール政策を終わったらでは30人学級全廃しますということには、多分もうならないだけの実績を上げて評価を得ていると思います。今の状態がそのまま続くかどうかというのは、これはわかりません。これはそれこそ新しい体制でまた点検をして考え直していただけるというのがいいと思いますけれども、少なくとも私の受けている感じではニューディール政策終わりました。はい、30人学級も全部全廃しましょうということには多分民意はならないだろうと思いますし、新しい体制の中でも多分ならないだろうと思います。これは大きな教育現場の充実を図ることに貢献したと思います。

 それから先ほど例に上げました県立高等学校の図書館の司書を常勤化したというのは、これは本当に大きな効果があったと思います。これは以前、教育長の方からも答弁がありましたけれども、貸し出し冊数が非常にふえたとか、生徒の読書意欲というものが増したとか、その成果というのはさらに年月を経て後年必ずや出てくるものだと思います。そういう点では非常によかったと思います。これもニューディール政策終わりました。はい、また高等学校、県立高校の司書を非常勤の方に戻しますということにはまずならないだろうと思います。

 そういうふうに今回のこのニューディール政策というのは、いわば臨時的、暫定的にスタッフを配置したという面があるわけですけれども、そのことが実は臨時的効果ではなくて、恒常的効果を生んでいるという面があるだろうと思っております。

 もう一つは、この財源を生んだのは県職員の皆さんの協力で、導入するときにはかなり議論もありました。異論、反論もありましたし、私も直接覆面交渉でかなりの時間を費やして理解を求める努力もしましたけれども、途中経過では異論反論がいろいろありましたけれど、最終的には快くこのニューディール政策に協力をしてもらったわけで、私としては非常に感謝しております。この職員の協力、特にしようがないからということではなくて、むしろ積極的に雇用のために自分たちも協力しようという意識を持ってもらったということ、これは高く評価しなければいけないと思っております。
 

●瀧山総務部長答弁
 
 雇用のためのニューディール政策の財源総額は幾らかということです。平成14年から16年の間、給与等の削減により生み出した総額は、約100億円です。これについては申し上げたように来年度まで、平成19年度まで、6年間で事業を実施していくものです。

 次に、雇用創出についてどの程度だったのかということですが、これは来年度19年度の見込みも含めてお答えさせていただきます。

 まず民間においてですけれども、新規雇用した事業主の方へ奨励交付金等を交付しております。その対象者の方が大体6,500人程度です。この奨励金の対象にしていますのは、常用4カ月以上ですとか、雇用期間の定めがない者、あるいは雇用期間が短くても、あらかじめ更新を予定されている方を対象にしていますので、そういう意味では常用雇用というぐあいに考えているところです。

 行政ですけれども、これは単年度で見ますと、ピーク時で約200人程度を採用したとなっています。ですから6年間トータルしますと、これは重複、年度間の重複になってしまいますけれども、大体、1,200人ということになるのでしょうか、重複を入れますと1,100人程度。

 それからもう一つあって、行政サービスの拡充によっての間接的な雇用を、大体1,000、これも延べですけれども、1,700人程度できたのではないかと分析しているところです。

 次に、経済の波及効果についてです。
 そもそもニューディール政策というのは、雇用の創出とワークシェアといいますか、給与を削って多くの方、その分で多くの雇用を創出しようという目的でして、決して経済波及効果をねらったものではございません。結果的には論理的に言いますと、波及効果というのはないと思っております。というのは、職員の給与と言いますか、全体をどう配分するかという問題です。平たく言えば職員の給与を95にして、残りの5を別の雇用でする。やっぱりパイはもともと100ですので、100のパイをどう配分するかということですので、経済的な波及効果というのは、これによっては理論的にはないのではないかと考えているところです。

 

<雇用のためのニューディール政策について>2

 
 この政策に協力された職員の皆さんにとっては、本当に当初は困惑された想定外の話であり、個々の生活においては大変厳しいものであったろうと思いをめぐらすものですが、政策も終了が近づくにつれて、また新たなる不安も生じております。

 先ほど答弁にはありましたけれども、これらの財源で福祉や教育などさまざまな分野で行政による直接雇用として、職場に多くの人が配置され常用化しております。ニューディール政策としては、職員の増員は確保された財源の範囲内で行うため、増員期間は6年間と限られ、その間少しずつ職員の総数をもとに戻していくとされております。最終年度、最終年を迎える来年度から行政による雇用された職員の引き上げが徐々に始まると思います。しかし、その職員の再雇用の問題、また職場に穴が開くことへの行政サービスへの低下の問題、政策の終了とともに大きな混乱も予想されるわけですけれども、今後の対応について知事の御所見をお伺いしたいと思います。
●知事答弁

 雇用のためのニューディール政策の終了に伴って、その現場に混乱が生じるのではないかということをおっしゃいましたが、多分伊藤議員の杞憂だろうと思います。というのは、ニューディール政策が終わったからそのニューディール政策に伴って、たまたまそのとききっかけになって採用された職員が、もう用済みとして退職するということはありません。、ちょっとこれは誤解がありまして、そのニューディール政策ということで定数をふやして、そのときに実数が足らないので追加の採用試験を行ったりしたわけです。しかし、これはちゃんとした採用試験で、ニューディール職員としてずっと一生レッテルを貼ることを前提にして採用したわけではないのです。県職員の定数をふやす、そのためのその試験の枠を拡大したり、試験の追加をやったということで、ニューディールのときにそれを契機にして採用されたから、ニューディールが終わったら用済みということではないわけで、全体の定数の中でこれは調整していくことになります。ですから、ニューディールで採用された人の生首が心配ということは一切ありません。

 もう一つは、そのニューディールで拡大して配置したところが撤収するということ、これはあります。例えば県立高校の図書館の司書、これをもとに戻すことは多分ないだろうと思いますけれども、幾つかのところではニューディールで拡大したところをもとに戻す、現状に復帰させるということはあるだろうと思います。それはやむを得ないことだろうと思いますけれども、それもそこが必要かどうかということをきちっと定数査定のときに吟味してやっておりまして、それはいろいろな考え方の違いは場合によってはあるかもしれませんけれども、むやみやたらにニューディールでつけたから、自動的に機械的に全部撤収するというようなことはやってないつもりです。この点につきましては総務部長の方から少し補足を申し上げたいと思います。

●瀧山総務部長答弁

 ニューディール政策に伴ったその後の職員の配置等、配置といいますか、定数等の考え方ですけれども、契約上15年、16年はピークで、実際には17年度から暫減を始めております。そのときに知事の答弁にありましたように、ニューディール期間が終了したから一律に定数削減、問答無用で定数を削減するというようなことはしておりません。組織定数の編成作業の中で、業務内容を個別に点検しております。業務終了によって計画どおり解消すべきというようなものももちろんございます。例えば、枯れ松伐採対策等によって1名つけていましたが、それもういいではないですかということもありましたけれども、逆にBSEの検査対応というのは現在も続いておりますので、ニューディール17年度終わりましたけれども、それは引き続き正式、ニューディールでない通常の定数として配置しているというような作業を行っているところです。今回の19年度の定数の中でもニューディール関係の予算定数15、16人を減としましたが、個々の業務の内容を判断して、7人は本来の定数としてきちんと対応すべきではないかということで定数に振りかえしたところです。例えば、福祉相談センターのDV対策だとか、あるいは企業立地の誘致対策等そのような措置を行っているところです。したがって、来年度、20年度に向けてですけれども、19年度でニューディール政策が終了しますけれども、19年度に行う20年度に向けての組織定数編成の中で個別に検討していきたいと考えているところです。