2.県政の諸課題 |
<公契約とコンプライアンスについて>
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この正月に古代エジプトという番組を見ました。その中でピラミッドが古代の王の墓というばかりでなく、他の古代遺跡を含めた国家施設が、雇用対策の目的を持って建設されたものだと解説されていました。5,000年も前から今日に至るまで、公共事業が雇用対策として行われていたことに驚くとともに、雇用状況が思うような改善が見られない本県においても、素直に受けとめなければならない問題とも痛切に感じた次第です。
私は、公共事業が雇用対策であるという発想を、公共事業を公共サービスと置きかえ、施設の道路の建設だけでなく、福祉や教育、社会保障を含む公共サービス全体をとらえた雇用対策について考えてみました。本県のニューディール政策もその発想の一つのあらわれだと思います。
昨年の11月定例会以降、公共事業をめぐる入札制度の見直しが委員会を中心に検討され、今議会でも話題となっておりますが、私は県民の生活感、賃金などについて心配しています。11月定例会で、我が会派の湯原議員の質問に対して、知事が業務をアウトソーシングした場合、受託先で働く方の雇用が不安定になっている。特に指定管理者制度の導入により、3年という期限のため雇用関係が短期的になり、正規職員であったものが非正規職員となることを助長しているといった旨の感想を述べられ、アウトソースを進めることは、行政コスト削減の反面、非正規化の促進につながるなど、一長一短があり少しひっかかると答弁されています。
私は、公共サービス並びに公共事業については、適正な雇用が確保される入札条件、契約内容、価格設定などが必要である観点から質問をさせていただきます。
私は落札者と契約を締結する際には、雇用する従業員に対して適正な労働条件をきちんと守っているのかどうか、契約条件にきちんと明確すべきと考えています。県外業者との入札競争に勝つため、ダンピングに近い受注を行い、その負担を不当に県民である従業員が負わなければならないような公共サービスであってはならないと考えます。
昨今のような競争が激しくなる状況にあっても、企業の健全経営、労働者の労働条件や生活保障される入札条件、価格設定として、適切に賃金の支払いが行われているのか、待遇が保障されているのかどうかをチェックするシステムが必要であると思います。知事の御所見をお伺いします。
県は違法な労働ということで、過去に何度か労働基準監督署から是正勧告を受けております。本来ならば、このような業者が入札などに参加しようとした場合には、業務改善などにより是正が徹底されるまでは、排除することが県民生活の安定、向上には欠かせないものだと考えます。したがって、工事仕様書や契約書において、労働基準法、労働安全衛生法、パート労働法、男女雇用機会均等法、育児介護救護法、雇用保険法、社会保険法、労働組合法、労働者派遣法などの遵守など、社会的価値の尊重を明記させ、法の趣旨に合致しない不当な業者は、公共入札から排除することが必要だと思いますが、知事の御所見をお伺いします。
公共事業、指定管理者制度などの委託側、発注先である県では、予定価格の設定の人件費算出に基準を設けられていると思いますが、これに人事委員会が調査されている民間給与実態調査などの資料が用いられているか、知事にお伺いします。
公共サービス、公共事業に投入される税金は、納税者にとってみれば当少なければ少ない方がいいと考えられると思います。しかし、安ければすべてがいいというものではなく、事業に従事された県民にどれだけの額が手元に残り、残った分がどれだけ消費などに回り、めぐって県民の生活に寄与するのか、県内の景気の浮揚に貢献するのかも一つの重要な視点であると考えますが、知事の御所見をお伺いします。
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●知事答弁 |
公共調達における発注者といいますか、調達者のミッションは何かということの問題提起があったのではないかと思うのです。要するに、伊藤議員がおっしゃったのは主として公共事業などの発注する際に、受注者側の対応をよく見て、例えば賃金の問題だとか労働関係だとかそういうのを見て、発注者がふさわしい人に発注すべきだ、ふさわしくない人は排除すべきだ、こういうことだと思うのです。この問題は非常に難しい問題で、伊藤議員のおっしゃることも一理、0.5理ぐらいないわけではないとは思うのですが、余りこれを重視しますと、実は行き着く先は社会主義経済であったり、それからもっと言えばもう県庁が主導する壮大な官製談合の固まりになってしまうわけです。要するに、どういうことかというと、ふさわしい人に仕事を発注しましょうということなのです。ふさわしいかどうかはだれが決めるかというと、官が決めるということになるわけです。実は官製談合というのは、あの人たちなりにふさわしい人に発注しているはずなのです、よしあしは別にして。
伊藤議員のおっしゃったように、ちゃんとその賃金もきちんと不払いとか遅延がないように、不払いがあってはいけませんけれども、遅延もないように、きちんと労働法制を守っているかどうか確かめて、この人はふさわしいから発注しましょう、この人ちょっと不払いが起きているから発注しませんとか、こういうことになるということは、要するに物を買う側、サービスを調達する側がふさわしい人を選ぶということになるわけで、まさにこれは官による取引相手決定ということになるわけです。その悪い究極が官製談合です。形態は似たようなことになるわけです。そうなると、ことは公共事業だけではなく、例えば物を買う、鉛筆1本を買うにも商店に行って、ちょっと奥を見てちゃんと従業員に給料を払っているかどうかとか、こういうことをしなければ鉛筆1本買えないということに、極端なことを言えばそうなるわけで、そんなことはしなくてもいいように、大体売っている店で買えばいいですよというのが今の世の中です。
では、何が行われてもいいのかというと、そうではありません。例えば全く給料を払っていないとか、それから労働法制が守られてないという、それはその土木建設業だけではなくて、他にもあり得るわけですけれども、それらは物を買う側とか、発注する側がチェックするのではなく、国の労働機関、労働関係機関がありますから、そこがチェックするという仕組みになっているわけです。これはですから土木建設業だけではなく、一般の商店でもそうですし、一般の企業でもそうなのです。県庁もその対象になっていて、労働基準法違反がありますよということを指摘されるわけです。ですから、伊藤議員のおっしゃることはわかるのですが、それは物を買う側とか、契約する人がチェックするのではなく、しかるべき労働機関がチェックすることが我が国の建前ですが、それに基づいてやるということではないかと思います。そこを、物を買う側が一々やろうということになると、これは多分身動きが取れなくなる、取引ができなくなる、極端なことを言えばそうなるのではないかと思います。
それに関連して、例えば労働関係の法制を守っていないと、そういう不当なことをやっている業者を取引の相手から排除すべきでではないかと、これは今でも実はあるわけで、その種の法律を守ってないということになると、指名停止になったりするわけで、この点については庶務集中局長の方から申し上げたいと思います。それからあわせて民間給与の実態と予定価格との関係についても、御答弁申し上げたいと思います。
先ほど私も触れましたけれど、県庁も非常に大きな購買力を持っており、いろいろなものを、物品とかサービスの調達をするわけですけれども、その公共サービスなどを含む公共調達をする物の使命は何かということですけれども、伊藤議員は恐らくいいあんばいに、みんなに満遍なく利益も従業員の給料もちゃんと払われるように目配りをしながらその調達をするべきでないかと、おっしゃるのだろうと思いますけれど、私はやっぱりちょっと違うと思うのです。
この経済、この地域経済というものを県が管理しているわけではありません。管理できるものでもありません。県は確かに相対的には非常に大きな購買力を持った存在ですけれども、やっぱり性質からいうとあくまでも購買者の一人で、市場における消費者の一人なのです。特にしかもその消費者は、自分の金で買うものを調達するわけではなく、納税者の皆さんからいわば頂いた、お預かりしたお金で物品なりサービスを調達する、そういう性格のある消費者です。その消費を通じて公共サービスを供給すると、納税者の皆さんにまた還元する供給するという使命を持っているわけです。
ということはどういう使命かというと、県民の皆さんが真に必要としているサービスをできるだけ低コストで上質な形で調達し供給するという、これがミッションです。多くの皆さんに利益が出るように、みんながハッピーになるように物を買いなさいということは、私は行政のミッションではないと思います。それをやり出すと何になるかというと要らない物を買います、しかもその行き着く先は不当に高い物を買います。それから競争原理を排除しますということになるわけで、それが現実に今この公共事業の世界では起こっているわけで、これを排除しようというのが今の必要な作業ではないかと思います。ですから、改めて申し上げておきますけれども、県民の皆さんが真に必要とするサービスをできるだけ低コストで、できるだけ良質な形で市場から調達して、そしてそれによって必要な行政サービスというものを供給する、これがいわゆる公共支出の使命ではないかと思います。
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●泉谷庶務集中局長答弁 |
法令違反業者の入札からの排除についてです。建設工事はもちろんのこと、業務委託、あるいは物品購入等について、指名停止措置要綱というものを定めています。そちらの方で、業務に関し不正または不誠実な行為をし、契約のあり方として不適当であると認められるという場合につき、一定の期間、指名停止をすることにしていますが、その具体的な運用として、労働関係法等の法令違反につき、不正または不誠実な行為ということで、指名停止にすることとしています。
予定価格の設定基準につき、民間企業実態調査を用いているかどうかということです。指定管理者制度を導入する際の人件費の算定資料として、この実態調査を利用することとしています。しかしながら、その他の県が発注する代表的な業務につき幾つか調査をしましたが、利用していないというのが現状です。
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<公契約とコンプライアンスについて>2
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私は要するに安かろう悪かろう、それではだめでないですかということが基本的にありますので、先ほど質問したわけで、続いて追及したいと思いますが、一般的に経営者側から見れば従業員は弱い立場にあります。リストラとか非正規職員化を恐れて、不当と思われる労働条件でも勤務を余儀なくされている面もあるわけです。県発注の公共工事、公共サービスにおいて、県内の同職種、同等の平均賃金を下回らない適切な賃金が支払われる制度を構築するために、発注時の人件費相当分の算出に人事委員会が行っている民間給与実態調査などの資料を活用されることも必要かと思いますが、検討されていることがあれば知事に御所見をお伺いしたいと思います。
公共工事や公共サービスが適切に実施された場合には、県民生活に寄与したことになりますが、しかし、県民が低賃金で不当に働かされた犠牲、負担の上で賄われたのであれば、決して企業努力で行政コストが削減されたとして手放しで評価されるものではない。もう少し公共サービスを受託して提供する側、公共事業で建設、施設建設などに従事する側への配慮、目配りが必要ではないでしょうか。行政コスト削減ということのメリットだけではなく、デメリットについても納税者である県民にも理解していただく責任が行政にもあると考えますけれども、知事の御所見をお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
公共調達に関して、安かろう悪かろうではいけないのではないかということですが、それはそうです。安かろう悪かろうではいけないのです。ですから、私何回も申し上げておりますとおり、公共調達のミッションは必要なものをできるだけ低コストで、できるだけ良質な形で調達するということです。ここに非常に大きな苦労があるわけです。伊藤議員のおっしゃるとおり、先ほどその一理というか0.5理、三分の理があるとは思いますが、それを重視していくと結局、高かろう悪かろうになってしまうのが世の中なのです。高かろう良かろうのこともあるかもしれませんけれども、総じて高かろう悪かろうになってしまうのが官の公共調達なのです。ですから、最近のアウトソースだとか市場化テストだとか指定管理だとか、いろいろな手法が新しく導入されているのは、結局その高かろう悪かろうではいけないので、できるだけ低コストで良質な形でということに変えていくための手法です。競争原理が働くと、理想的には私が申し上げたように、できるだけ低コストでできるだけ良質な形で競われた結果が出てくるわけです。ただ、場合によっては伊藤議員が心配されるように競争原理の中で安かろう悪かろうというのが出てくる可能性がないわけではない。そこで、例えば公共工事ですと、チェックというものが出てくるわけです。このチェックというのは、仕上がりのチェックです。いわゆる検査という形で、ここにもある程度のコストをかけてチェックして、品質が悪くならないようにするということをやっているわけです。その際に、県としては納入してもらったもの、製品をチェックします。工事の仕上がりをチェックしますけれども、その過程においてその受注者側の従業員の皆さんに、ちゃんとしたいろいろな手当てがなされているか、労働法制が守られているかというのを発注者としてチェックするというところまではできないということを申し上げているわけです。それは、第一義的には、例えば賃金が払われないということになりましたら、当然労働者自身が権利を主張されなければいけない。それはそういう劣悪な環境にあるのなら転職ということもあり得るでしょうし、それから賃金が未払いということでしたらその賃金をちゃんと払うようにという請求されたり、場合によっては労働審判とかそういうところに持ち込まれる。これが原則で、そこをなしにして、大丈夫ですか大丈夫ですかと言って発注者側がはらはらするというようなことではまともな取り引きができないわけで、そこはやはり個々の労働者の皆さんも自己の権利をちゃんと守るということ、それを前提にしてこの世の中は成り立っているわけで、発注者側がそこまで心配するというのは、心配しなければいけないというのは、これはちょっと私には理解できないところです。
それから、県が例えばアウトソースなどをするとデメリットも出てくるのではないか、そういうことをちゃんと考えておくべきでないかということなのですが、私が11月の県会だったでしょうか、やはりアウトソースをするということは良性コストを下げるとか効率制を増すということで、正の面、ポジティブな面はありますけれども、その結果例えば短期雇用の方にシフトをするという副作用もあるのです。これを考えておかなければいけないということを申し上げたわけです。これは、やむを得ない面があるのです。というのは、指定管理に出すときに、未来永劫というわけにいきませんから、やっぱり3年なり5年なり区切るわけで、そうすると受注者側の方も当然3年なり5年なりということで雇用計画を考えるわけです。ですから、そういう形でアウトソースに出すということは、おのずから一定部分短期雇用の方に移るということは織り込んでおかなければいけないわけです。発注するときに、アウトソースするときには短期間の契約だけれども、受注者側は長期契約にしなければいけませんという条件をつけるというのはなかなかできないことなのです。ですから、やはり物事にはポジティブな面があれば、それの反対の面もある。一長一短あるわけで、その一長一短を含んだ上でどちらの手法を選択しますかという、これは最終的には総合判断だと思うのです。ですから、指定管理に出したら短期雇用がふえるからだめだということになれば、指定管理はだめだということになってしまうわけです。しかし、今までなぜ指定管理に出すような仕組みをつくったかというと、やはり官の周辺に非常にその高かろう悪かろうという行政サービスの供給体が通常あったということ。これを正さなければいけないという納税者の視点でアウトソースということを編み出したわけですので、やはり一長一短の短もある程度出てくるということは、飲み込んでおかなければいけないのではないかという気がします。ただ、できるだけ副作用などは少なくした方がいいので、具体的にそれが個々のレベルで何ができるかということはきめ細かく考えていかなければいけないと思います。
官が発注する場合に、民間給与実態調査などを積算の資料に活用しているのかどうかということについては先ほども少し御答弁を局長の方から申しましたけれども、改めて局長の方から御答弁申し上げます。
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●泉谷庶務集中局長答弁 |
公契約において、民間給与実態調査の活用をしたらどうかということについてです。
予定価格を算定する場合の考え方なのですが、まず県が発注する業務には清掃といった庁舎管理や建設工事、あるいは電算委託、印刷、あるいは先ほどから出ています指定管理者による施設運営、さまざまな分野がございます。それぞれの分野によってはその業種で共通した積算方法が定着しているものもあります。その例としては建設工事や清掃、あるいは印刷などです。建設工事や清掃などはその業種別の実態調査、例えば建設工事ですと、国土交通省や農水省が中心になって公共事業労務費調査というのをやっておられて、その結果に基づいた単価を使っておるというようなことがございます。これらの調査は民間給与を実態調査よりも実態に則したよりきめ細かい単価を用いている調査です。それから、印刷などについては、作業工程ごとに作業に必要な物件費や人件費を合わせた言わば込みの単価で積算すると手法が業種によって一般的です。
その一方、共通の積算方法が確立されてない分野もございますが、最初の答弁で申し上げたように、指定管理者による施設運営は給与実態調査を目安に積算しておりますが、業種によってはそれが使えないというのもあると思います。しかし、業務の内容により、その実態調査を使えるようなものもあると思いますので、活用を検討したいと思います。
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<公契約とコンプライアンスについて>3
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知事となかなか議論がかみ合わないのですけれども、それは確かに知事のような従業員、はっきり物が言える従業員でしたら言えるでしょうが。逆に経営者の人は大変でしょうけれども。しかし、ほとんどの皆さんは、やはりなかなか会社の経営者の皆さんに物が言えないのです、現実的には。そのしわ寄せはみんな労働者、働いている現場の人にきているのです。そういう部分をやはりもっともっと行政としては、行政と出す公共事業とか公共サービス、そういう部分の中で考えないといけないのでないかという思いなのです、私は。 ですから、例えばそれがなかなか難しいということであれば、ただ価格だけで決めるのではなく、その一つの選択肢が経営とかいろいろな分野の総合的な判断、それを足して2で割る。要するに、総合入札方式もその一つの選択肢なのです。ですから、そういう部分あらゆる部分をもう少し検討する必要があるのではないですかということなのです。もし知事の方で意見があればお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
公共調達にいろいろな要素を織り込めということだろうと思いますが、私はやはり透明でシンプルにするということが一番の基本だろうと思います。透明でシンプルにするというと、その着眼する要素は何かというと、それは調達する際の価格と、それから調達したサービスなり物品なり工事なりの仕上がりの品質だろうと思います。この2つが着眼すべき公共調達のポイントだろうと思います。伊藤議員のおっしゃるように、労働者一人一人のその受注者側の労働者、従業員一人一人の条件が適正であって、ちゃんと労働補正といいますか、ちゃんとした給料が支払われているかどうかまでチェックしなければいけないということになると、その今般の入札制度の改革などでも一般競争入札に移行するということがもう時代の流れでして、いろいろなところからいろいろな入札がきたときに、すべてを全部一人一人の従業員の皆さんからヒアリングをしてちゃんと適正な給与が支払われているかどうか、条件はどうかということを聞き取らなければ落札者を決められないということになりましたら、これはもう事実上無理です。それはどうでもいいということを私は申し上げているわけではなくて、そういう問題は別の視点でちゃんとチェックしたりする是正措置がある、そういうバックアップ装置があるということを申し上げたわけです。その際に、全部本人がということを言ったわけでないのです。ただ、最初はやはり不満とか不服とか契約違反があるのなら、まず本人が言わなければいけない。本人がまずその権利救済の声を挙げて、主動的に動かなければいけない、これは当たり前だろうと思うのです。本人は何もしない、何も言わない、だれかがやってくれるのを待つというわけにはいかないわけです。それは、その上であとは労働関係機関のチェックが入ったり、場合によっては司法による救済が図られたりするという、それは我が国には別の観点のバックアップ装置が既にあるわけで、そこをやはり信頼をして市場での取り引きというものは行われているわけです。それを余り信用しないで、もう官が発注するのだからしらみつぶしに公正、妥当、コンプライアンスを全部調べなければいけないということになったら買い物はできないということになるわけです。
総合評価というのは、聞こえはいいですがいろいろな、さっき言ったシンプルな価格と調達した品物、サービスの品質のチェック以外のものをいろいろな要素を入れだすと、それは行きつくところはやっぱり官製談合になるのです。例えば、官製談合で役人主導の官製談合の総合評価というのは、天下りをちゃんと受け入れてくれましたという総合評価なのです。政治家の主導する官製談合は、選挙の際のいろいろなしがらみがあって、それをちゃんとお返しをするというのが総合評価なのです。だから、これは一番悪い典型例ですけれども、いろいろな総合評価をずっとやったときに切れ目がないのです。そこで、どこで線を切るかというと、やっぱりシンプルにするには価格と品質ということに最終的には落ち着くのだろうというのが今の結論ではないのでしょうか。総合評価というものを私は決して完全に否定するものではありませんが、やはり物事をきちんと整理していこうと思ったら原則に立ち返るということは重要なのではないでしょうか。
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