豆  屋

 カトマンドゥの旧王宮広場の一角に「豆屋」がある。後で記録の写真を整理して気付いたのだが、初めてカトマンドゥの町を歩いたときにすでにシャッターをきっている。きっと気になるポイントだったのだ。カトマンドゥの町でのスケッチは、この「豆屋」の「豆袋」。描いていると、あっちから一人、こっちからひとり・・・子どもたちが集まってくる。きゃっきゃと笑いながら、のぞき込み、取り囲むのは、どこの国の子どもも一緒だなぁ。片言の英語と身振りで「豆袋」を描いていること、側で動かすんじゃないぞなんてことを伝える。その仕草が子どもたちにはまた、可笑しさの種になっているようだ。

 それでも、真剣なんだってことがわかると、今度は気遣いをする子どもも出てくる。顔にかかる髪を後ろからせっせとかきあげてくれるのだ。髪が垂れると邪魔になるだろうという心配りだ。も〜!可愛いたらありゃしない。年上の子どもたちのすきを見て、年少の子どもたちがすり寄ってくる。隣に座らせると、じっと身じろぎもせず手元を見ている。やれやれ、やっとキミの出番だね。毎日毎日、あきるほど子どもたちの顔を見て過ごし、やっと大人の時間を過ごしにやってきたネパールで、またまた、子どもたちに囲まれて。それでもそれがたまらなく嬉しいと感じる自分がいた。日本語と英語とネパール語がてんで勝手にとびかい、笑い声のたえない、素敵な時間が続いた。