鳥取県東部医師会報用に準備した≪随筆≫ : 本稿は2013年7月号(No.406 p.47-51)に掲載
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◇ 2011年に一人でロンドンを巡った際も、鉄道ファン的行動(本会報No.400「ロンドン点描6」)をしたが、今回のウィーンでも乗り物を楽しんだ。
◇ Show map をクリックすると ウィーン~乗換のザンクト・ペルテン~目的のメルクまでの走行路線図が示される。さらには、例えば、ザンクト・ペルテンをGoogle Maps等で確認する。同市の西側方向に鉄道を追うと、ドナウ川が地図に現れた時点で目的地メルクの位置が確認できる。ドナウ川を下ると、デュルンシュタインなどが分かる ◇ 本稿はネットで確認しつつの記載だが、自由旅行を支援してくれる便利な時代になったとの実感を、今新たにしている。インターネットが普及し始めた当時は、日本に比べて西欧の遅れを感じていたが、今日では、少なくとも自由旅行支援の観点では、日本がかなり拙い。 ◇ さて、電気機関車が牽引する国内特急OIC690の編成は、発車前に座席確認を兼ねて車内探索したが、荷物車が連結されており、旅行者の持ち物と分かる自転車も積み込まれていた。列車に自転車を“同乗”させるのは、日常的なことで、都市部で自転車専用路が整備されていることと合わせ、うらやましく感じた。横3列の一等車の連結があり、車掌に尋ねると、国際列車では定番の食堂車の連結は(国内特急ゆえに)無く、売店・車内販売があるとの回答だった。二等車は、通常の中央通路・横4列の座席車と寝台車風の壁面通路、横3列の車両があった。後者に座した。一つのコンパートメントに、オーストリア国鉄のシンボルカラーである赤の列車番号が記された資料があり、中に停車駅名と時刻が印刷されていた。1994年にウィーン西駅からザルツブルクを往復した際にもこの資料はあった。優れたサービスが定着・継続している。 ◇ オーストリア国内特急は特急券が不要で、自由な乗換えが可能であることもありがたい。車内資料で、乗車した国内特急の終着が14:43 Villach Hbfとある。手持ちのガイドブックにある地図で、オーストリア西部・チロル方面を探すが探し得ない。車内検札の際に、車掌に地図を見せて尋ねたら、フィラッハは南部でイタリア・南欧への交通の要所と分かった。 ウィーン西駅発、行き先をフィラッハとしてOIC690の走行路線をShow map で展開するとリンツ、ザルツブルクを通過し、ザルツカンマーグート地方を南下し、オーストリアアルプスを抜けて、イタリア、スロベニアとの国境に近い交通の要所に、所要5時間47分で到着すると分かる。車窓を想像し、心がときめく机上旅行です。
◇ ドナウ川で最も美しいとされる世界自然遺産ヴァッハウ渓谷の絵葉書スポットはメルク修道院、デュルンシュタインや古城と川沿いのワイン畑である。なお、オーストリアでは、アイゼンシュタット方面と当地ヴァッハウ渓谷がワインの二大産地である。 ◇ デュルンシュタインは教会の青い塔が象徴で、約18年前に訪問した際は、秋の夕暮れが早いこと、情報が乏しかったことで、下船できなかった。情報を得ていた今回は、デュルンシュタイン下船した。ただし、下船すると、「All-in-one Tickets」から外れ、ウィーンに戻る際の基点となるクレムスまでの移動は実費となる。 ◇ 同日は19:30からウィーン・コンツェルトハウスでゲフギエフ指揮・ロンドン交響楽団演奏会のチケットを入手済だったので市街には18時過ぎには戻りたかった。検索すると、デュルンシュタインからクレムスまではポストバス、ウィーンにはドナウ川に沿い北側に位置するフランツ・ヨーゼフ駅に地域快速列車での移動が示された。 デュルンシュタインで下船した後、限られた時間を有効に使うために、鉄道ダイヤを調べたが、願いとする時間帯にヒットせず、バスダイヤが提示されるのみであり、怪訝に思った。止むを得ず、ポストバスを用いることにしたが、初めて訪れる田舎であり、鉄道駅と比べると分かり難いバス停Dürnstein/ Wachau Parkplatz Ost の場所を確認して出国したかった。デュルンシュタインの公式HPで同Tourist Informationのメールアドレスを使い、問い合せて、バス停の場所を確認し得た。 それでも、分かり難い小さなバス停だった。一旦は行き過ぎたと分かる鉄道駅の道路標識に行き着いた。尋ねて、引き返し、バス停を見出した。 日帰り旅行者にとって、(日本的常識で道路渋滞で遅滞が懸念される路線バスより)確実で安心できる鉄道の情報がネットで得られなかった訳が、現地に来て分かった。 若干の時間を活かして、花で飾られた小さな鉄道駅舎に行くと、壁面掲示されていた運行表に、何と1日に3本のみの列車であった。日本では、どんなローカル線でも10本程度は運行されていよう。 目的地(Krems an der Donau)行のポストバスに乗り、運転士から乗車券を2.5 EURで購入し、座席に着いた。国道ではなく、ポストバスならではの生活道路を、ワイン畑の間や集落の中の通りを走り、所要18分、定刻に到着した。 ◇ クレムスからウィーンへの帰路に乗車した地域快速列車“City Shuttle”は、予想外に立派だった。全車2階建てで、先頭車両の顔には凄みを感じた。当然、2階に座した。閑散とした車内でウィーン到着まで相向いの4席を独占し得た。山間部の畑作・牧草遅滞を走る往路と異なり、ワイン畑、ドナウ川沿いの景観が楽しめた。
鳥取に暮らす小生が抱いている路線バスのイメージは渋滞遅延・交通過疎地・・・。オーストリアでは、都市圏ではバス専用路線が整備され、鉄道との一体経営でもあり、運行は正確である。鉄道と同様に(本稿2項)扱われており、バス停は[Station]欄に駅名表示され、かつ、列車番号同様のバス番号を確認すると各駅における発着時刻が明記されている。
◇ ちなみに、日曜日にアイゼンシュタットを発ちルストに行く場合、オーストリア国鉄のRoute Planner(本稿2項)で、出発地(From:)にEisenstadtを入れ、行き先(To:)にRustを入れると「RUST AM SEE」つまり、世界自然遺産のノイジードラー湖畔のルストが得られる。旅行日と出発11:00を入れて検索すると、[Station:Eisenstadt Domplatz 3番ホーム dep 11:00発、バス番号765、Rust am See Postamt着11:43]と分かる。さらに、発着の駅名をクリックすると各駅の地図を得ることが出来るし、「Show map」をクリックすると運行路線図が(各々ズーム機能付で)得られる。さらには、バス番号をクリックすると始発から終着までの駅と発着時刻が、検索した区間は赤く強調されて出てくる。至れり尽くせりで、海外からの自由旅行者にとっては非常に有り難い。 鉄道と同様の運行情報が得られ、かつ、ダイヤ通りに運行されるポストバス数路線の乗車体験から、日本と異なる公共交通機関のあり方における文化の違いを感じると共にオーストリア国鉄の“誇り”を感じた。 ◇ 交通面における日本での遅滞・不備を強烈に体感研修し得るので、旅行愛好家の諸氏はお試しを!
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