鳥取県東部医師会報用に準備した≪随筆≫

パリに魅せられて (7) 日曜日 朝モンソー公園の賑わい

モンソー公園へ向かうバス前方風景(左)、モンソー公園至近のバス停から住宅街を歩いた(右3点)

 フランスの首都パリは公園都市と称せられる。ウィーン、ロンドンも公園都市であり、自身で歩いて体感した差異を列記する。
 ロンドンは中心部に大きな公園が多い。ハイドパーク、セイント・ジェームズパーク、リージェンツパークやグリーンパークがそうで、道路は例外を除き、これらを迂回することになる。
 さらに、スクェア、文字通り、道路に囲まれた四角の広場的公園も多々ある。大英博物館に近いラッセル・スクェアは、巨木が茂り、林のような印象をも抱くが、木々の間にはイングリッシュガーデン的花壇が散在し、中心部には噴水があり、その周囲に長椅子が配置されている。単なる四角の広場にしては、日本との対比では、十二分に恵まれた広さが確保されている。地図では小さく表記されるラッセル・スクェア一つでも鳥取県では著名・良質な公園に位置づけられよう。
 ウィーン中心部はロンドンほどの面積はないが、黄金のシュトラウス像が著名で木々が多く、水鳥が憩う池もある市民公園、庭園とするには木々に恵まれた王宮庭園や市民庭園などがリンク通り沿いにある。さらに、木々に囲まれたプラッツ(広場)が多い。市庁舎前広場、カールス広場、ベートーベン広場などで、何れも日本では恵まれた公園と称せられる雰囲気・大きさである。かつ、西部域にはシェーンブルン宮殿の広大な公園・庭園ゾーン、北には森林に恵まれた公園と言えるベートーベンゆかりのハイリゲンシュタットの森がある。
 中心部の東隣には直線4.5kmに及ぶハウプトアーレ(Hauptalle) を有して、周囲に大きな木々が多く、森とみなせる環境や池などが配置された“緑のプラター”と愛称されるプラター公園がある。この西北端に、映画『第三の男』で著名になった観覧車を有するプラター遊園地ゾーンがある。
 さらに、ウィーン市の西端に位置する“ウィーンの森”に旧王家の狩猟地であった広大な公園がある。プラターやシェーンブルンとは比較にならない全踏破が不能なほどの広さだが、東側の一区画にフランツ・ヨーゼ二世が、皇妃エリザベートのために建てたヘルメスヴィラなる狩猟館があり、この界隈の散策は極上である。

何かのレース?と見間違えたほどにジョギングする人が多かった日曜日 朝のモンソー公園

 そして、パリ。中心部には観光地化しているチュイルリー公園、エッフェル塔のアルシャン・ド・マルス公園、リュクサンブール公園がある。北東部にはラ・ヴィレット公園、西部には著名な広大なブローニュの森などがある。パリには未体験の公園が多々あり、機会をうかがっている。
 さて、本題のモンソー公園(Parc Monceau)は、市中心部、凱旋門から徒歩範囲内高級の住宅街地区にあり、既述の公園との対比では規模が小さい。
 パリ到着の翌日、10月第一日曜日、オペラ座にほど近いホテルを発ち、最初に訪れたのがモンソー公園だった。予想を越えた良質な環境であり、長居してしまった。
 凱旋門を通過する路線バスを、凱旋門が遠望できる界隈のバス停で降り、北に歩いた。静寂な住宅街であり、壁面に大きな蔦が張り付いている建物・・・。松江市の某カフェレストランの壁面に蔦があり、実は拙宅にも這わせたが、大失態・・・。安普請の拙宅では、元気の良い蔦に家の劣化を強いられることになり、排除にエネルギーを要してしまった。と、思い出したが、石造りの建物では問題にならないのだろうかとも思った。
 徒歩5分弱で公園南門が見え、巨大な木々が林立しており、園内に入るなり、圧倒された。木々を仰ぎ見ながら、ふと気づくと、ジョギングする人たちが視界に入ってきた。走ってくる人が多いことにも気づいた。
 次々と、走って来る人たちに、休日企画の競技会かと思えた。が、走るコースがまちまちであるのに気づき、「ジョギングする人たちだ!」と察するまでに時間を要した。やがて、確信に変わったが、とにかく、多人数の人たち、老若男女が、反時計回りに公園の周回路を各々のペースで走っておられた。

ローラースケートに興じる子どもたち、ストレッチをする大人とジョギングする人たちなど

 公園の南門から入り、時計回りに歩むと、花々の植込みが続き、子どもたちのための遊具ゾーンがあった。安全確保のために木の柵で囲まれ、出入り口には柵を開閉する機構が組み込まれている。ウィーン然りで、不審者対策と、走り回る幼児への両面の配慮とみた。
 次いで、ローラースケート用に整備されたコーナーがあり、歓声を上げながら、子どもたちが走り回っていた。見守る大人はボランティアと思えた。鉄柵に太いゴムを結び、ストレッチをしている大人たちの珍しい光景があり、黒人男性が指導していた。外周路には次々と反時計回りにジョギングする人たちが多く、時計回りにのんびりと歩く我々は、彼らの進路を妨げないように、配慮して歩いた。
 公園の中央は大樹に囲まれた広いグリーンゾーンになっており、バトミントンに興じる若者がいて、適度に設けられている散策路を歩くように走る(?)肥満度の高い中年の方も・・・。
 我々はグリーンゾーンに入り、さらにゆっくりと歩き、良質な環境に浸った。

園内にイングリッシュガーデンが多々あり、東ゾーンには廃墟風円柱が外周に並ぶ池もある

 東西に長い横長の長方形に近いモンソー公園は、東西・南北の中央に主路があり、四分割される。外周路を一周しても2km弱程度の大きさで、北東部には廃墟を想わせる円柱、門などや池がある。池の周囲には古代ローマを彷彿とさせる円柱が弧状に発ち、趣が良い。
 30〜40分程度と想定していたが、多様性に富んだモンソー公園の滞在は1時間半近くに及んだ。
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 2012年10月、妻の還暦記念に、二人で初めて訪れたパリは魅力的で、奥が深く、7連泊、実質6日間の滞在で“研修”するには不十分だった。帰国後、ほとぼりが冷めてから、妻曰く「しまったパリの雑貨屋に行きそびれた!」と。小生「ナ何?! “花の都パリ”で雑貨屋?!」と「何故、滞在中に希望を言わなかったのだ」との思いが・・・。結局、恵まれて、2013年10月に2年連続でパリに7連泊した。
 モンソー公園を訪れたのは6日(第一日曜日)の朝のひと時でした。パリ、ブローニュの森、10月第一日曜日・・・!医局の仲間から情報を得たことだが、モンソー公園を後にして、“聖地”に向かった。

≪随筆≫ パリに魅せられて (7〜12)は、2013年[124歳/2人]
(7)日曜日 朝モンソー公園の賑わい (8)ブローニュの森〜孔雀と戯れる公園 (9)イル=ド=フランスのプロヴァンを訪ねて
(10)ジヴェルニー村〜モネの庭を訪ねて (11)国鉄でロワール地方の古城を巡る旅 (12)岸 惠子のサン・ルイ島で気儘に
≪随筆≫ パリに魅せられて (1〜6)は、2012年[122歳/2人]
(1)モンマルトルで奔放に (2)サン・マルタン運河で遊ぶ (3)彼女の思惑とプチ・トリアノン
(4)オペラ座ガルニエ宮に驚嘆 (5)天晴れプチ・パレ (6)ラパン・アジルで歌う
姉妹編 《随筆》 [ウィーンを愛して